98冊目 「お弁当が知ってる家族のおはなし」 清原亜希

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清原亜希さんのお弁当のファンなので発売日に購入。

塩分と旨味の量に対してご飯が足りなくなるんじゃないかと不安になるような、それでいて地に足のついたお弁当が本当にうまそう。オカズとは別に、ご飯の上に梅干しと明太子が両方のってるのとか最高ですね。確実にごはんが足りない。


ブログも人気。サードウェーブ男子を蹴散らす、運動部の子のためのお弁当がこれだ。

97冊目 「ハマータウンの野郎ども」 ポール・ウィリス

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10ヶ月になる息子が棚から取り出した本と戯れていて、どれどれ何かなと思ったらこの本だった(表紙がぐちゃぐちゃなのはそのせい)。

妻の本で、読むのは今回初めて。息子による思いがけないきっかけで読みはじめたらこれがおもしろい。
階級の再生産がどのようにして行われ、反抗する若者がなぜきつい労働を進んで受けいれるようになるのかを考察した70年代のイギリスの研究。
テレビで切り取られる成人式での騒ぎのようなものがいかに世界共通のあるあるかと気づかされるところまでは笑えるが、そこから先はあまり笑えない。それは、自分もまたその再生産の一部であることに気づくから。


96冊目 「ウォーク・ドント・ラン」 村上龍 村上春樹

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これもいちるさんが奇書として紹介していた、いまや貴重な対談本。『コインロッカー・ベイビーズ』を書いた後の村上龍と、『羊をめぐる冒険』を書く前の村上春樹が、いまでは考えられない自由さで文学論や人生観やセックスについて語っている。
http://kotoripiyopiyo.com/2015/04/murakamiharuki2014041401.html


村上春樹が、父親のことを話したり、子どもがほしい言っているのはめずらしく、こんな発言が出版されたのかと驚く部分多数。

もっとも心に残ったのは、村上龍が、毎日とろろ蕎麦を食べて散歩して息子とサッカーをしながらコインロッカーを書いていた日々の話し。春になったある日突然、いつもサッカーをしていた芝生がいっせいに青くなった瞬間に感じた悟りのような感覚。日常の風景から、普遍的な感覚をつかむ感性ね。そういうのたまあるじゃないですか。そのあたりが臨場感を持って語られてて、特に印象深かった。

あー、春と夏の間のいまの季節の日曜日。最高に気持ちいい。


95冊目 「あのひとと語った素敵な日本語」 あのひと+ユビキタ・スタジオ

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いちるさんの紹介で知った奇書、村上陽子さん(配偶者・村上春樹さん)の覆面対談。


覆面なのになぜそう言い切れるのかと言われても困るが、とにかくそうなんだからしょうがない。読めばわかる。

春樹のファンであれば、どこもかしこもおもしろい内容だが、それを控除してもなお、これはちょっとした(つまりちょっとどころじゃない)本だった。

読後になお印象深いのは、青山(とは明言されてないんですが青山のことです)のマンションで暮らす者が感じる風景と心象を、謙遜や自慢や立場を抜きにして率直に語られていたこと。この本がもし覆面対談でなかったとしても、陽子さんはそのように直裁に語ったと思うけど、とにかくそういう話は他のどこでも聞いたことがなく、大変おもしろかった。

あとは、結婚観とセックス感ね。『ノルウェイの森』の緑が奥さんをモチーフにしているという話は聞いたとこがあるけれど、まさに。緑は、仏壇の前で「お父さん、これが私のおまんこよ」と言ったけど、陽子さんも同じことを言いかねない雰囲気を感じる。とっても魅力的。

あとついでに、対談の相手が(言葉は悪けれど)クズなのもおもしろい。その意味でも奇書。


「あのひと」+ユビキタスタジオ
2006-01

94冊目 「pixivエンジニアが教えるプログミング入門」 金子達哉

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思っていたよりも易しく、思っていたよりも為になる本だった。ウェブのの基本が本当にコンパクトに抑えられている。思えば、自分がライブドアに入って最初の年に覚えた開発の基本がこれと同じ内容だった。


企画職にも、デザイナーにも役立つ入門書。新卒の教育にもそのまま使えそう。



93冊目 「ビッグデータ・コネクト」 藤井太洋

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SF大賞を獲ったあとの最新書き下ろしは、松本清張ばりの推理小説。冒頭ページから引き込まれ、一息に読み終えた。長めの小説なのにダレるところがなく、これまでの作品の中でもっとも没入感が高い。個人情報がテーマということも重なって、現代を生きる万人にお薦めできる傑作。藤井作品のなかで一番好きかも。


武岱(ぶだい)という謎の人物と、事件の謎。ミステリ的手法で読者をぐいぐい引っ張るが、その中心にあるのは、一般には理解しがたいIT土方(という言葉をあえて使います)の思考回路の謎。物語の後半、それが鍵になって全てが解き明かされる。
小説内には、現実世界を騒がせた事件やサービスやIT技術がたくさん登場するが、それが単なるパッチワークにならないのは、著者が体験してきたIT土方のリアリティがあるから。もしこのようなプロットやトリックを思いつく人が藤井さん以外にいたとしても、藤井さんのようには作品に魂を込められなかったろう。緻密な構築物の中に、切れば血の出る、生々しい叫びが塗り込められていて、ぞっとする迫力を感じさせる名作だった。

私は、紙で予約注文していたのに、待ちきれず0時発売スタートの電子版で読みました。お好きなほうでどうぞ。



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