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ロードス島戦記25周年企画の目玉のひとつとして、『ロードス島戦記 灰色の魔女』の新装版が11月1日に発売になるそうです。しかも、50ページもの加筆をして!



このニュースをものすごく喜んでいる自分を発見して驚いているわけですが、喜びついでに余計なこと考えてみました。『ロードス島戦記』『ロードス島伝説』『新ロードス島戦記』と続くシリーズの先駆けとなった第一巻『灰色の魔女』にいまあえて加筆をするとしたら、どうするか。

光と闇の統合の象徴をいかに継承するか


『ロードス島戦記』という小説の主人公はご存知のようにパーンですが、ロードス島の歴史を語る上での真の主人公と呼べるキャラクターは「ナシェル」だと考えることができます(彼は『〜戦記』の前日譚である『〜伝説』の小説の主人公でもあります)。

わかりやすく図式化すると、光の象徴はファーン、闇の象徴はベルド、その中間に位置しようとするのが灰色の魔女カーラであり、それらすべての統合の象徴がナシェルです。ナシェルは、その重要な役割を確かに果たしながらも、ある事情によって歴史の表舞台からは消え去ってしまいます(ちなみに、消え去ってしまわねばならなくなったその理由は、『ロードス島伝説』という小説のもつもっともすぐれた美点のひとつですので、ぜひ実際にお読みなられることをお薦めします。後悔させません)。

つまり、第一巻『灰色の魔女』というのは、統合の象徴であるナシェル亡き後の混乱の世界にあって、光と闇の勢力がオール・オア・ナッシングのぶつかり合いをするまさにその瞬間からスタートします。そこで暗躍するのが小説のタイトルにもなっている灰色の魔女カーラで、彼女の存在がさらに世界の混迷を深める原因にもなっていきます(もちろん、彼女にはそのつもりはないんだけど)。
これに解決をもたらすのが、主人公のパーン。ラノベにありがちなチート設定から見放された平凡な少年が、『ロードス島戦記』全7巻を通していかに成長し、かつて失われた統合の象徴を継承していくのか、というのが本シリーズの一番の見所です(ちなみに、究極のチート設定を持つのがもう一方のナシェルです)。

『ロードス島伝説』(主人公・ナシェル)と『ロードス島戦記』(主人公・パーン)を通読すると、こういう構造が非常にわかりやすく見えるのですが、時代的には『〜伝説』の後の話になる『〜戦記』のほうが第一巻として発表されているため、このあたりの構造のほのめかしが足りていない、という不満はあります。

もちろん、そんなほのめかしがなくたって、『灰色の魔女』は素晴らしい小説です。ただ、いまあえて加筆をするとしたら、作家・水野良はその点について書きたいと思うのではないかと予想します。

ご存知のように、『ロードス島戦記』のほうには、ナシェルというキャラクターは一言もでてきません。かつてナシェルと冒険を共にしたキャラクター(六英雄)が勢揃いし、いずれもパーンに接しているにも関わらずです(それにはもちろん、物語上のちゃんとした理由があることが『〜伝説』のほうで明らかになるわけですが)。
そしてもちろん、パーン自身もナシェルのことは一切知りません。にも関わらず、いやだからこそ、ナシェルとはまったく違う素地素養を持った人間が、まったく違うアプローチとまったく違う回答によって、やがてロードス島の統合の象徴になっていきます。小説内の時間では、ナシェルの死から何十年と時間が経っていますが、それが隔世遺伝的にパーンに継承されるその第一歩となるのが、第一巻『灰色の魔女』なんです。できればそこに、なんらかの補助線を引いてみたい(どの立場から言ってるのか自分でもよくわかりませんが)。

本作は今年で25周年ということですが、50年後にも生き残るべき強度をもった物語だと思っています。そのはじまりにして核となる第一巻には、シリーズを通した大きな物語への補助線というべきか伏線というべきか、そういった加筆を期待したいと思います。

発売が楽しみです!

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