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舞城王太郎の『山ん中の獅見朋成雄』を読んだ。
勢いもあるし、アイデアも面白いし、パロディとしての読み方もできて複層的にも楽しめるし、文学的ねらいやメッセージもわかるんだけど、あーでもやっぱりこれは習作レベルだよ、と思う。
Amazonのレビューを見て、「これは『千と千尋の神隠し』のパロディだ」という指摘を読んでなるほどと思った。それを念頭に置いて筋を思い返してみると二度楽しめる。

また別の人は、「これは『鉄鼠の檻』にヒントを得た禅の公案だと思って読むべし」みたいな指摘をしていた。これもなるほど。そう考えれば、このめちゃくちゃな筋立ての物語も、それなりに思えてくる。

僕が好感をもって読んだのは、

- 過去の自分と現在の自分と未来の自分の同一性は何によって保証されるのか
- いやそもそも、自分という存在が自分という意識ひとりのものだなんてのは思い込みに過ぎないんじゃないだろうか
- だけど、俺が俺だけのものでないとしても、俺は俺でしかないのだ、俺でない俺も俺だ

といったテーマを素直に描いていたところ(これってずばり『脳のなかの幽霊』だよなあ。っていうか、この本を読んでから文学観が変わった)。
しかもそういったことがウジウジ書かれているんじゃなくて、舞城流のはっちゃけた勢いのある文章で超ポジティブに書かれているのが、いい。

でもやっぱり、全体としては習作レベルだなあ、と思う。
胸ぐら掴んで投げ飛ばして押さえ込んで捻り殺すような迫力と説得力に欠けるというかなんというか。

舞城作品でまだ未読なのは『好き好き大好き超愛してる』だけなんだけど、大丈夫かなあ。どっしりと腰を据えた大作が読みたいなあ。次の奈津川シリーズに期待。

以下は廉価版。自分は間違ってハードカバーを買っちゃったけど、こっちのがおすすめ。

山ん中の獅見朋成雄