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『納棺夫日記』を読みました。


納棺夫日記 (文春文庫)納棺夫日記 (文春文庫)
著者:青木 新門
販売元:文藝春秋
発売日:1996-07
おすすめ度:4.5
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関連して思い出したのは『豆腐屋の四季』。


豆腐屋の四季―ある青春の記録 (講談社文庫)豆腐屋の四季―ある青春の記録 (講談社文庫)
著者:松下 竜一
販売元:講談社
発売日:1983-01
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共通点は、「専業の物書きに憧れつつも夢破れて市井の職業人になった著者が、生活の合い間に日々の思いを書き残し、それが後に作品として出版された本」であるということ。

もちろんこれらの著者は、ただ日記を書いていたわけではありません。「納棺夫」の場合は出版業の知り合いのツテをたどって、「豆腐屋」の場合は新聞の川柳コーナーへの投稿という行為を通して、出版の機会を得ています。

こういった狭き門へ挑む努力を可能にしているのは、「内なる表現欲求」と「物書きへの憧れ」だろうと思います。その結果、私たちはその作品を読者として楽しめるわけです。ここには、書き手とメディアと読者が機能する美しい装置が働いています。

一方、今日において文章を書きたいと思うような人は、まずもってブログを開設するんだろうと思いますが、残念ながら、現在の(メディアとしての)ブログサービスは、その先の道に憧れを抱かせるような演出に成功していません。
優良な記事を書きまくるブロガーが、単なるアフィリエイターと紙一重に見えてしまうとしたら、その責任はメディアやサービス提供者の側にもあるような気がします。


かつて私も担当としてちょっと関わっていた企画として、こんな試みがありました。

ココログ新年会で「ココログブックスコンテスト」受賞作品が発表(2005/01/24)

1月22日、@niftyのブログサービス「ココログ」のユーザーが集う交流イベント「ココログ新年会」が都内で開催された。イベントでは書籍として出版する優秀ブログを決める「ココログブックスコンテスト」の結果も発表され、フクダカヨ氏による「フクダカヨ絵日記」が選ばれた。

傘が首にかかってますけど  フクダカヨ絵日記 (ココログブックス)傘が首にかかってますけど フクダカヨ絵日記 (ココログブックス)
著者:フクダ カヨ
販売元:インフォバーン
発売日:2005-03-14
おすすめ度:4.5
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ブログを本にしようというアイデアそのものは、昔っから誰もが思いつくソリューションなのですが、「内なる表現欲求」と「物書きへの憧れ」をかきたてるには、それだけじゃ足りないんだろうと思います。
「魔法のiらんど」がそれでうまくいっているとしても、ブログの場合はもうちょっと違ったかたちがあるんじゃないかなあと思っています。

とまあそんな古くて新しいテーマを思い出させてくれた本でした。自分の仕事の領域に引きつけて、思案の材料にしていきたいと思います。
あともちろん、作品としてもすごくおもしろかったのでおすすめです。こういう系の本をもっとご存知の方がいたらぜひお教えください。


※この2冊の本は、富山の薬売りよろしく家に来るたびに本を置いていく友人から推薦されたものです。どうもありがとう!