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「そろそろ風俗に行こうかな」と思っていた西村賢太さんが芥川賞に受賞』とか『芥川賞受賞の西村賢太さん 中卒フリーターで前科者、友達一人もいない…』という感じで話題になっていた西村賢太のデビュー作を読んだ。


インタビューにおいて、「小説家」ではなく「私小説家」であると答えているように、それはもう強烈な私小説でした。読みながら、いつの時代の小説なんだろう? と何度も確認しちゃうような時代錯誤を感じる文章。だがそれがいい。

作家になりたい、小説家になりたい、というエゴからは遠く離れた場所から書かれた小説だけに、作中の「私」の突き放し方に一切におもねりがない。「ほら、俺ってこんなにダメなんだぜ」とか「でも、ダメな俺だけど俺は俺なんだよ」というような色気が微塵もない。


数ある意見のなかには、DVの告白と描写を悪趣味だとして遠ざけるものもあれば、DVをしながらそれを隠す作家(有名どころだと井上ひさし)より誠実だとするものもあるけれど、それはどっちでもいい。作品の出来が全てだと思う。
ちなみに、作者によれば「起こった事は9割が事実、描写は8割がフィクション」とのこと。


とにかくおもしろかったんで、その他の作品も続けて読んでみようと思います。

どうで死ぬ身の一踊り (講談社文庫)どうで死ぬ身の一踊り (講談社文庫)
著者:西村 賢太
講談社(2009-01-15)
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