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一般的に言って、仕事に感情を挟むのはよくない、ってことになってるけど、知的産業の場合はそれにあてはまらないと思う。むしろ積極的に感情を表現したほうが、スピードもクオリティもあがる。

たとえば、事務的な報告が箇条書きされた読みづらい日報や議事録でも、その人が実際にどう思ったか? という個人的な感情(所感)が書きこまれているだけで、ずっと理解しやすくなる(その感情をきっかけに、情報の解釈の糸口が明確になるからだと思う)。

また、メールでのやりとりや会議でも、個人の感情が漂うリラックスした雰囲気だと、やりとりの質がずっとよくなる。会議の前の「アイスブレイク」が方法論化していることからも、このあたりの効果は多くの人が実感できると思います。

つまり、「感情は情報処理のエンジンになっている。だからどんどん感情を表現しよう」、ということなんだけど、それを裏付けるこんな話があります。

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『生存する脳』の主張はとても単純だ。外科手術をして誰かの脳の一部(中略)を切除したところ、情緒を感じる能力が失われたが、それ以外には一切なんにも(中略)変わらなかったとする。(中略)さて、感情や情緒から解放された、純粋に合理的な人間ができあがったわけだ。

さあ観察してみよう。ダマシオ(※『生存する脳』の著者です)の報告によると、情緒が一切ない人間は、もっと単純なことさえ決められなかった。朝はベッドから起きてこられず、ああでもないこうでもないと悩んで一日を無駄に過ごす。(『まぐれ』 p248より)


私情をはさまず合理的な決定を下せるようになるのでは……という予想に反して、人は情緒なくして意思決定ができないという結果が出たわけですから、これは驚きですよね。

また、棋士の羽生名人もこんなことを言っています。

『百年インタビュー 羽生善治』(NHK)

熱くなりすぎるとか、冷静を失うというのは、良くない時もあるんですけど、感情があるからこそ、いろいろな発想であるとかアイディアとか、集中力とか瞬発力を生むということもあるので、一概にサイボーグのように感情を排除してやるのがいいとは思わないのです。感情をうまく使うというか、一つの起爆剤のようにする。それが大きな集中力やモチベーションを生むことは、良くあることなんです。

極限の集中力が求められる場面ではふつう、感情を鎮めるべきだと教わってきましたが、そうじゃなくて、むしろ感情を燃料に集中力を高めるのだ、ということを羽生名人は言っています。感情的になることが悪だと思っていたそれまでの考え方からすると、すごいパラダイムシフトです。

というわけで、実践をおすすめします。

追記


感情を出すといっても、コミュニケーションの相手に対して敵意や嫌悪感を剥き出しにするというような意味ではありません。ビジネスライクにやることに疑いを持たずに進めている作業に対しても、自分らしさを出してもいいんじゃないか、というくらいのニュアンスですかね。

具体例がないことで、ちょっと誤読されやすいかなと思ったので、実際に自分がどうしているかを書きます。以下に示す引用は、自分が社内向けの議事録を書くときのやり方です。

議事録「ほげほげ社」11/06/07

参加者:
* ほげほげ社 鈴木様
* もじゃもじゃ社 薮田、佐々木(書記)

場所:ほげほげ社@青山

■ほげほげ社について
- 800万世帯へ、スポーツ中心とした番組配信事業
- 放送内容がニッチなコンテンツなので、ネット広告と相性がいいのではないかと思っている
- ネットと放送を組み合わせた広告事例にチャレンジしたい
- PCサイトには過去実績があるが、モバイル面が弱い

■次回のアクション
- 導入の検討は来期以降。
- 8月〜9月に検討を開始するので、そのタイミングであらためてアプローチ。

■所感
・会社の受付がすごくきれいでいい感じ!
・担当者の名前に見覚えがあったのでググってみたらTwitterアカウント見つけた。なんか自分と趣味があいそう。 http://twitter.com/#!/test
・ネットと放送の融合とかちょっと古いんじゃ…現状のコンテンツをいかしてモバイルを整えたほうが伸びそう

最後のほうで太字にした「所感」の部分が、いわゆる個人的な感情の部分です。こういう私的な部分、素の自分が出ていないビジネスメールがほとんどですが、事務的な報告の箇条書きだけの議事録に比べてはるかに頭に入ってきやすいです。
日報とかもそうですね。やったことをリスト化して送られても頭に入ってこないのですが、どこかに自分らしい部分が入っていると、平面的だった情報が立体的になるような感じがします。

というわけで、うまい例だったかどうかわかりませんが、実際自分はこんな風なやり方をしています。