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年末年始、本棚の中身をかなり大掛かりに処分してみたら、対象のほとんどがビジネス書やムックや新書の類いだった。そういうのを一生懸命読んでも、瞬間的な栄養補給として機能することはあっても、根本的な肉体改造にはならないとほぼ断言してもいいと思う。

本棚に生き残ったのは文学と詩と批評と伝記とノンフィクションと写真集。読後に、自分の精神に傷跡を残すような、そういう体験を与えてくれるものを読まなきゃと思った。

というわけで「今年はビジネス書を読まない」という制約を自分に課しました。

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以下は最近読んだ本。


ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)
著者:小澤 征爾
販売元:新潮社
(2002-11)
販売元:Amazon.co.jp
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あまりの波瀾万丈さに興奮して、奥さんに夢中になってあらすじを熱弁したら、「漫画みたい」という感想をいただきました。確かに、完全に漫画的展開。でも、グランプリを獲った後になぜか修道院の石造りの部屋で凍えている絵は漫画すら超えてた。最高の一冊でした。


黒い家 (角川ホラー文庫)黒い家 (角川ホラー文庫)
著者:貴志 祐介
販売元:角川書店
(1998-12)
販売元:Amazon.co.jp
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11年12月15日発売号のBRUTUSのテーマが「本」。そのなかで、日本のホラー小説の代表作として扱われていたので、ふだんあまり手に取らないジャンルなんですが、読んでみました。

感想。ラノベ的な読みやすさですぐ入り込めた。時代を反映したテーマだけに、刊行から15年ほど経つとさすがに古びている部分があるけど、なかなかおもしろかったし、最後まで飽きなかった。それと、現代社会に生きる人が感じる不安を取り扱うホラー小説という分野自体に興味がわくような内容だった。この著者のその後の作品や、ホラーの分野での近年の人気作みたいなのが気になる。


穴  HOLES (講談社文庫)穴 HOLES (講談社文庫)
著者:ルイス・ サッカー
販売元:講談社
(2006-12-15)
販売元:Amazon.co.jp
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これも同じBRUTUSで知った本なんだけど、これは読んでよかった。予想や期待を超えていた。これが世界中で売れ続けて、発売から10年以上経っても読み継がれている理由がよくわかった。

もし、中学生がこの小説を読んだら、絶対に本好きになると思う。

誰かのお説教や、知識の詰め込では人は変わらない。だけど、物語を通じて誰かの人生を生きることで、精神に傷跡を残すことはできる。そういう、物語ならではの効用を存分に感じられる一冊。教科書を読むより、ビジネス書を読むより、こういう物語に出会ったほうがいいよなとあらためて思った。