カテゴリ:
藤原正彦の『遥かなるケンブリッジ』を読んだ。


遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス (新潮文庫)遥かなるケンブリッジ―一数学者のイギリス (新潮文庫)
著者:藤原 正彦
販売元:新潮社
(1994-06)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


なるほど知性とはこういうものか、と襟を正しくなるような良書でした。

知性とは、自分が拠って立つ文化的ポジションをしっかりと持ち、そこから、他者との距離を正確に測ることで、自分と他社を深く理解しよう努める行為だと、読後の今だとそのように思います。

奥さんとふたりの子どもと一緒にイギリスに移住した一年を記録したエッセイのハイライトは、次男のいじめについての対応方針を、数ヶ月のすったもんだの末に翻すところ。
最初のうちは、「いじめたらやりかえせ」という方針を貫いていた藤原雅彦が、家族やイギリスでの同僚とのコミュニケーションを通して、自分の誤りを認め、当初の方針を翻すに至るプロセスは、その正直な筆致とあいまって、知性のあるべき姿を正しく文章に焼き付けていて、そこがなによりおもしろい。

同じようなエッセイとして評判の高い『若き数学者のアメリカ』も、後日、続いて読んでみたら、こちらも同様におもしろかったです。
また、既読のなかでは、『天才の栄光と挫折―数学者列伝』がおすすめ。サイモン・シンなどが好きな人は必読です。

若き数学者のアメリカ (新潮文庫)若き数学者のアメリカ (新潮文庫)
著者:藤原 正彦
販売元:新潮社
(1981-06)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

天才の栄光と挫折―数学者列伝 (文春文庫)天才の栄光と挫折―数学者列伝 (文春文庫)
著者:藤原 正彦
販売元:文藝春秋
(2008-09-03)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る