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小鳥ピヨピヨのいちるさんに『ブログ誕生』を薦められたので買ってみたんですが、2010年刊行でこのタイトルだから、本当に売る気があるのかと疑いたくなるレベル。人に薦められなかったら絶対に買わないですよこれ(でも、人に薦められた本は、実際にほとんど買います!)。

それを2〜3週間ほど本棚に置いておいたんですが、ふと本と目があってのでそろそろ読みごろだなと思って、週末に読みました。

ブログ誕生 ―総表現社会を切り拓いてきた人々とメディアブログ誕生 ―総表現社会を切り拓いてきた人々とメディア
著者:スコット・ローゼンバーグ
販売元:エヌティティ出版
(2010-11-25)
販売元:Amazon.co.jp
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確かにおもしろかった。

まず、2010年の時点で『ブログ誕生』という本を出すのはえらい遅すぎたんじゃないかと思ったけど、そうではなかった。それくらいの時間が経たないと、この「革命」の価値を冷静に批評できなかったという意味では、スマートフォンインターネットの時代の夜明けにこの本が出たのは、ちょうどいいタイミングだったというわけです。

この本のスコープは、巷間によく言われるブログ元年の2001年(911によってブログの価値が社会的に認められた、とかそういうエピソード)からではなく、MosaicやNetscape Navigatorが登場した1994年頃にさかのぼって時系列逆順の表示形式(日本で言う「連邦」みたいなサイト)がどのように広まったかという検証からはじまる。

そこから、Bloggerや、Weblogs.comや、BlogRollといったツール面の話(あと、PermlinkやRSSといった形式の話)。Google AdSenseなどのマネタイズの話や、プライベートを垂れ流しにする個人の意識の変化や、GizmodoやHuffington Postといった本格的なメディアの話に広がる。

本書で語られているのは、ネットおたくの雑学自慢や、わしが育てた的な優越感ではなくて、史上もっとも手軽なPublishing Toolを手にした人々の熱狂や戸惑いといったものだ。

だから、USとは事情の違う日本のブログに照らし合わせても、ブログではなくTwitterに読み替えて読んでも、ここに書かれていることの本質は変わらない。「総表現社会を切り拓いてきた人々とメディア」というサブタイトルに嘘偽りはなく、その意味で、大変な良書だと思いました。ECでもSNSでもゲームでもないインターネットの歴史と精神について、非常にいい教科書だなと。新卒採用の企画職には教養として読んでおいてもらいたいような内容でした。


「史上もっとも手軽なPublishing Toolを手にした人々の熱狂や戸惑い」ということで思い出したのが、紀田順一郎の『日本語大博物館』。10年前に読んで以来、再読することがなかったんですが、この機会にあらためて読んでみました。


日本語大博物館―悪魔の文字と闘った人々 (ちくま学芸文庫)日本語大博物館―悪魔の文字と闘った人々 (ちくま学芸文庫)
著者:紀田 順一郎
販売元:筑摩書房
(2001-09)
販売元:Amazon.co.jp
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中でも印象深いのは、活版印刷、写植、DTPといった商業印刷の正統とは傍流にある、ガリ版印刷(謄写版)。これもまさに、原始的ながらPersonal Publishing Toolなんだよなと再発見だった。現在にも続く同人カルチャーや、ブログで表現行為をするブロガーの原点みたいなもんだなと。

この本、Amazonにレビューも出てませんが、すごくおもしろいのでお薦めです。

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