年末年始に読んでいた本
いやー、今年はKindleのおかげで年末年始の読書がはかどりました。旅行中に本を読む自分にとっては、持ち運ぶ苦労がない、というのが最大のメリット。iPodが登場してCDウォークマンが馬鹿馬鹿しくなったのと同じことが、やっとこさ本の分野でも起こったということがよくよく実感できました。
読んだ者のうち、おもしろかったものをピックアップ。

著者:石橋 毅史
販売元:新潮社
(2011-09-30)
販売元:Amazon.co.jp
B&Bの「本屋で年越し」というイベントで著者の石橋さんにお会いさせていただくことになり、未読だったものをKindle版で購入しあわてて読んだのですが、ものすごくおもしろくて夢中で通読。読後すぐ、イベントで石橋さんのお人柄と語り口を知れたのも幸運でした。一度でも本屋をやろうと思ったことのある本好きには必読の内容。岩手出身の自分には、「さわや書店」のエピソードも格別でした。
Kindle版が出ていますので、上のリンクもそちらに。

著者:いしたにまさき
販売元:いしたにまさき
(2012-12-23)
販売元:Amazon.co.jp
「ダイレクト出版オフ2012冬」の開催でもご一緒させていただいた、いしたにさん初のKindle本。この本のきっかけは、石川さんの以下のツイート。
-@hajimebs
いしたにまさき「あたらしい書斎」 http://t.co/EgXCYDhu 読んでいる途中で気付いたが、これは、書斎のデザイン本というより「私の知的環境の構築」を、身体側から始めて、周囲の空間へ、住環境へ、都市へと切り込んでゆく本なのだった。
2012/09/28 13:20:40
わたくし、『あたらしい書斎』も読みましたし、「ひらくPCバッグ」も買いましたけれども、こういう解釈はまったく思いつきませんでした。だからこのように看破した石川さんのすごさと、そのような一貫性を持ついしたにさんのすごさを感じてあらためてうなりました。その対談なので、おもしろくないわけがない。おすすめです。

著者:三鬼谷
(2012-12-15)
販売元:Amazon.co.jp
三木谷ならぬ三鬼谷のエロバカ小説。関西言葉がバカっぽくてエロっぽくていい。いや、エロくはないのか。Kindle本で時間つぶしするならこれがおすすめ。

著者:クリス・ アンダーソン
販売元:NHK出版
(2012-10-25)
販売元:Amazon.co.jp
ビジネス書は読まないという2012年の個人的な制約を取り払って取りかかった話題の一冊。いやこれ別にビジネス書じゃないから読んでもよかったなと思いつつ、楽しんで読みました。
でも個人的にはそんなにぴんとこなかったので、話題にあわせるために読んだ、という感じ。Kindle版が出ていてお財布にもスペースにも優しくて助かりました。

著者:犬子 蓮木
販売元:犬子 蓮木
(2012-10-29)
販売元:Amazon.co.jp
Kindle作家の犬子蓮木さんの小説。内容を想像しづらいタイトルのせいもあった読むのを後回しにしていましたが、良質な小説で好感を持ちました。
この「spring and autumn」の他に「winter and summer」という後編があってそれで完結しているのですが、2時間かからず読み終えられるちょうどいい長さといい、独特な設定をもった内容といい、Kindle小説の可能性を感じる本でした。

著者:長谷川 圭佑
(2012-12-01)
販売元:Amazon.co.jp
探偵小説風のSF短編。これもKindle小説です。これも評判を聞いて読んでみたら、確かによかった。ハードボイルド&宇宙ものということで、どこか宇宙海賊コブラを思わせる内容なのも好み。SFなのに主人公が原始的な郵便配達員、という設定もいい。その時代なら、手紙じゃなくてメールとかいろいろあるのでは? と不思議に思う方は、ぜひ本書を読んでその理由を確かめてください。続刊が待ち遠しい。

著者:数多久遠
販売元:数多久遠
(2012-12-29)
販売元:Amazon.co.jp
Kindle小説のレビューサイト「キンドる速報」で初めての★5(満点)が出た作品。元自衛隊幹部の著者が描く情報戦のエンターテインメント。僕なんかは用語がさっぱりである程度は読み飛ばしちゃった部分があるけれど、それでもおもしろかったです。特に後半の没入感は最高。
それと、悪役(?)にあたる人物がロマンチストな男どもで、主人公がリアリストな女であるというのも、この作品のポイント。タイトルも表紙も内容もとっつきにくいけれど、主人公だけは読者の味方である、というような意味で。主人公まで男だったら、最後まで読めなかったかも(笑)。

著者:伊藤 計劃
販売元:早川書房
(2010-12-08)
販売元:Amazon.co.jp
途中まで読んでいた伊藤計劃の『ハーモニー』も年末年始でフィニッシュ。一気読みした処女長編『虐殺器官』と、読み終えるまでに時間がかかってしまった『ハーモニー』の対比は、そのまま作品の評価と言っていいのでは。問題定期は刺激的だけれど解法にハラオチしない、というのはどちらも共通していて、デビュー作のほうが勢いがよくて人気がある、というような。とはいえ、もう伊藤氏の新作を読めないというのは、本当に残念に思います。
ちなみに、私は紙で買いましたが、これもKindle版がでています。特に『虐殺器官』のほうは、内容的にもKindleで読むのにぴったりだと思います。

著者:神林 長平
販売元:早川書房
(2012-03-09)
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神林長平の短編小説・エッセイをまとめた本(紙)。
伊藤計劃との架空の対話を含む表題作や、戦闘妖精・雪風シリーズのスピンオフ「ぼくの、マシン」が含まれていて、それをすべて読んでいる人にはたまらない内容。解説もすばらしかった。もし僕がミギー(寄生獣)だったら、しばらく沈思黙考したくなるくらいたくさんのヒントをもらいました。

著者:うめ
販売元:幻冬舎コミックス
(2007-09-22)
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B&Bの「本屋で年越し」でお会いした山内さんに、『まんが道』や『G線上ヘブンズドア』みたいなメタ漫画の雰囲気が好きなんですよとお伝えしたらおすすめしてくれた漫画。『東京トイボックス』(全2巻)。自分自身はテレビゲームをまったくやらないのでぴんときませんでしたが(すみません)、この作品にまつわる実話や後日談がおもしろくて、メタ的に楽しめました。
-@ume_nanminchamp
森田さん @TAK_MORITA の移籍は、何がうらやましいって、担当編集さんが移籍OKを明言してくれてるのがうらやましい。今だから言えるけど、トイボのときは担当編集に「キャラクタもタイトルも編集部のもんだ」「(移籍なんかしたら)二度と描けなくしてやる」って言われたものー
2012/09/29 05:50:31

著者:水道橋博士
販売元:文藝春秋
(2012-12-06)
販売元:Amazon.co.jp
すごく評判ですが、熱さあまって、終盤は空回りしていたように感じる。「たけしとひとし」「稲川淳二」「児玉清」どれもこれもおもしろいのに、どれかひとつ絞りきれなかったことで、散漫な印象になってしまっていて残念。博士のこれまでの本に比べると、肩に力が入りすぎていて、そてが美点にも欠点にもなっている、という感じで。力作であることは確かです。何度もひーひー笑って読みました。

著者:G. ガルシア=マルケス
販売元:新潮社
(1999-08)
販売元:Amazon.co.jp
途中まで読んでいたものを年末年始に再開。
登場人物が多くて、しかも名前が似すぎていて本当に大変ですが、誰が誰かわからなくなってもいいやと思いきっても楽しめてしまうのがすごい。めくるめく文学体験。いやもちろん、登場人物はしっかり把握したほうがいいわけなので、冒頭の家計図を何回も(それこそ4ページごとに)参照しながら読みました。こればっかりは、Kindleじゃ読めなかったと思う。紙でないと無理。装丁もかっこいいしね。
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