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前の記事で『ロードス島の歴史を語る上での真の主人公と呼べるキャラクターは「ナシェル」だと考えることができます』と書いたんですが、それは小説の読者にとっての話で、小説の中の時間を生きる住人たちにとっては、傭兵王カシューのほうが真の主人公なのではないか、という気がしてきたので追記です。

『ロードス島伝説』から『ロードス島戦記』の第一巻までに描かれているのは、言うなれば「英雄と戦争の時代」だと読むことができます。だとするならば、それ以後に描かれる『〜戦記』の第二巻から『新ロードス島戦記』は「政治と経済の時代」です。

カシューは、第一巻の英雄戦争において、英雄的行為からはもっとも遠い“不意打ち”によってベルドの命を奪うのですが、これはまさにふたつの時代の転換点を象徴するシーンです。カシューはその後、フレイム王国を隆盛に導きマーモ公国を擁立させますが、この一連の仕事は、まさに政治と経済の時代の主人公といえる活躍です。

一方、そのカシューと「対」になっているのは(あるいは「影」になっているのは)アシュラムです。

そう書くと「あれ?」と思う人もいるかもしれません。

ベルドの部下だったアシュラムは、どちらかというと主人公・パーンのライバルだと受け取られているのではないかと思います。ベルドのスペアたるアシュラム、ファーンのスペアたるパーン。そういう構造を読み取ることもできますし、ディードリットとピロテースというエルフの恋人という共通点もそのような読みを補強しがちです。

しかしパーンは、物語が進むにつれてファーンのスペア的存在からは逸脱していき、ロードスの騎士として独自のポジションを築き、アシュラムとの共通点よりは相違点のほうが目立つようになってきます。

そしてアシュラムです。彼は、世の中が政治と経済の時代に移り変わっていく中で、不器用にも、英雄と戦争の時代の気風でしか生きられないことが明らかになっていきます。

そのアシュラムにとってカシューとは、忠誠を誓った王(ベルド)を不意打ちで殺した憎き敵であることはもちろんですが、自分の生き方を時代遅れなものにしてしまう目の上のタンコブ的存在だったことでしょう。英雄と戦争の気風でしか生きられない彼には、政治と経済の時代は生きづらい、というわけです。
やがてアシュラムは、物語の中でロードス島を離れ、さらに南下しクリスタニアにまで漂流し、そこで第二の人生を生きることになります。

そこで再び思い出すのは、カシューという男の人生です。彼は、アレクラスト大陸から南下し、名前を変えてロードス島で第二の人生を生きました。そのカシューによって、まるで玉突きのように、アシュラムは間接的にロードス島を追い出されたと考えると、非常によくできた話だなと感心しますね。当時読んだときはそんなふうに思わなかったんですが、いまになってシリーズ全体をいま振り返ると、そんな風に考えられます。

時代の主人公だったカシュー、生きる時代を間違えたアシュラム。そう思ってもう一度再読するとおもしろいかしれません。

いやー、ロードス島戦記はおもしろい!