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イベントレポートとしてはいささか旧聞に属する話になりますが、何を思い立ったのか、新宿ロフトプラスワンで開催された「25周年だよ! ロードス島戦記〜集え! 戦士たち〜」に行ってきましたよ。

いやー、小学生の自分に教えてあげたい。「いいかい。おまえは30歳を超えてもまだ剣や魔法や竜の世界に夢中で、小説のことばっかり考えて、ついに水野先生の談話を聞きにイベントにまで足を運んでしまうんだよ」と。「まさか」と小学生の僕はいう。そしてそのまさかに驚いている33歳の俺。

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会場の平均年齢は、おそらく40歳から45歳の間。30代はむしろ若い方で、70年代から80年代の東京創元社を基礎教養としたトークに冒頭からついていけない。アニメといえばガンダムよりもヤマトという世代ならではの濃ゆいオタクトークが僕の耳を右から左に颯爽と通り抜けていきます(もちろん、会場は大ウケでした)。ロードス島戦記の核心にもなかなか触れようとしない。そしてなにかといえばグッズの宣伝ばかり。すわ、来る場所を間違えたかとも思いました。ニコ生のタイムシフトでよかったやないかと。

そんな自分が会場と一体になれたのが、アニメ版の第一話を丸ごと通しで流したときから。
あの神がかったオープニング、そして異様に力の入った特別な第一話エピソード、そしてふたたび心ふるえるエンディングよ!




これらの曲が世界で愛されている様子もどうぞ。




小説『ロードス島戦記』は『指輪物語』の強い影響下にあるわけですが、その映画版である『ロード・オブ・ザ・リング』が、アニメ『ロードス島戦記』の影響を受けていると水野先生は指摘しました(例の洞窟に侵入するシーンのことです)。なんでも、ピーター・ジャクソン監督は『ロードス島戦記』のファンなんだとか。あるいはまた、成人した娘さんがお父さんのためにアニメのオープニングを歌ってくれることもあるのだとか(僕もカラオケで奥さんに歌って聴かせたことがあります。まあそれはどうでもいいんだけど)。
などなど、そんな副音声の解説付きであの第一話を見るという贅沢ね。このあたりはニコ生では中継されていなかったから、本当に来てよかった。来てよかったよ!


そしてこのあとから、話はやっと新装版『ロードス島戦記』の核心に。
多少の意訳をしつつ覚えている範囲で箇条書きにするとこんな感じ。

・次のチャンスがあるかわからなかったから、『灰色の魔女』にはかなり詰め込んだ。こんなに売れるなら、もっとじっくり複数巻にわけて描いてもよかった。
・話を詰めこみ過ぎたのと、当時の筆力の問題から、小説の体をなしていない単なる「あらすじ」のようになってしまったところがある。
・しかし、当時書いたものをなるべく尊重して修正を行ったので、どこが加筆部分かは一読しただけではわかりづらいと思う。
・唯一、大幅な加筆をしたのはカシューとベルドの内面。彼らの年齢に近づいた(あるいは超えた)ことで、当時は書けなかったものを書くことができた。


加筆部分については、事前に以下のような予想をしていたのですが、どうやらぴったり正解とはいえなそうな雰囲気。でも、カシューとベルドの内面を掘り下げることで、どちらの仮説も裏付けられる可能性があるので、新装版を読むまでは判断を保留しよう。

新装版『ロードス島戦記 灰色の魔女』の加筆分を予想する〜ナシェルからパーンに継承されたもの〜
ロードス島戦記考察「英雄と戦争の時代」と「政治と経済の時代」〜カシューとアシュラムが象徴するもの〜


そして最後の質問コーナー。せっかくここまで来たのだからとがんばって挙手し続けて、なんとか一問だけ聞くことができました。

Q. 25年前にファンタジーの古典といえば『指輪物語』や『ゲド戦記』でした。それから25年経って、『ロードス島戦記』も準古典とも呼べるようなところに差し掛かっていると思います。なぜロードス島戦記は古典になれたのでしょうか?

担当編集吉田 「わかりません」
水野良 「買ってくれた読者のみなさんのおかげです」
出渕裕 「スタンダードをわかりやすく描いた、ということに尽きると思います。指輪物語なんて読みづらいでしょ。でもロードス島戦記は違った」

だいたいこんな感じだったと思います。
出渕氏の暴走気味なヤマトトークではじまったこのイベントですが、最後はしっかり〆てくれました。おそらく、水野先生も吉田氏も、あまりにも当事者すぎてうまく振り返れていなかったと思うんですよね。しかも水野先生にとってロードス島戦記というのは、25年前の懐かしい思い出なんかじゃなくて、現役の作家として乗り越えるべき壁としていまだ生々しい存在だということもよくわかりました。そこにちょうどよい距離感の出渕氏がいてくれて本当によかったと思った瞬間でした。


そして素晴らしいのはこの新装版の表紙だ!
イベント中にはまだ発表されていなかったものですが、いまAmazonをチェックしてみたらこのような表紙になるようです。



実際手にするまではわかりませんが、古典の風格が漂ってきそうなデザイン。いい感じ。こういう方向性の新装版だとわかってほっとしました。発売の11月1日が待ち遠しいわー。