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筒井康隆の自選ファンタジー傑作選。いやー、これは素晴らしかった! 読後感はサリンジャーの『ナインストーリーズ』のよう。12個の短編がそれぞれの世界観と文体をもっていていずれも完成度が高い。短編ならではの読者の突き放し方の妙も冴えていて、それゆえどんどんのめり込んでしまう。

特に印象に残ったのは以下の九編。つまりほとんどってことだけど。

薬菜飯店
法子と雲界
エロチック街道
タマゴアゲハのいる里
九死虫
秒読み
あのふたり様子が変

ヨッパ谷への降下

自分はあまりいい漫画家読みではないけれど、いろんな作家が筒井康隆のアイデアの影響を受けているのだなとにやりとするなどした。ジョジョ第四部のイタリア料理屋は「薬菜飯店」 のなんのヒネリもない翻案なんですね。あの話を漫画化した功は認めながらも、やはり原作の下品さのほうが破壊力があっていい。

「秒読み」における大人が少年に戻る際の描写も素晴らしかった。いやー、ほんと全部おもしろかった。今まで読んだところでいえばベスト。