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スコラ 坂本龍一 音楽の学校』を観ていて、「これって本当に坂本龍一じゃなきゃできない、坂本龍一のための企画だよなあ」とあらためて深く感じ入りました。なぜなら、この番組で取り上げている多様な音楽を、彼は本当に、机上の空論ではなく自らの作品とし、しかもそれをポピュラー音楽として統合する試みまでしてきたからです。

最新シリーズでは「日本の伝統音楽編」が放送されています。過去には、「電子音楽」「アフリカ音楽」「映画音楽」「ロック」「ジャズ」「クラシック」などがテーマになっていて、このままだと「カントリー」と「へヴィメタ」以外はすべて網羅しちゃうんじゃないかという勢いですが、それらの要素をごった煮で楽しめるのが94年から95年にかけてライブです。オリジナルアルバムでいうと『Sweet Revenge』から『SMOOCHY』まで、ツアータイトルでいうと『Sweet Revenge Tour』から『D&L』まで。



当時も熱狂して聴いていたけど、時が経ちやがて聴かなくなって20年。ふと思い立って聴いてみたら、ちっとも色あせてなかったことを発見しました。その感激でもってこの記事を書きます。戦メリとエナジーフローで大儲けしたエコ&脱原発の女ったらしインテリくそ野郎なんかじゃないんだから!


Moving On

残念ながらライブ映像が見つからず。気になる人はぜひDVDで。
アフリカンアメリカンの影響がもっとも色濃い時代の作品で、なかでもそれを象徴する代表的トラック。一度聞いたら忘れないSP1200の12ビットのローファイなサンプリングのイントロに、ソウルというかハウスな歌声に弦楽器が絡む。消そうとも消せない坂本印が刻まれた名曲。




Reglet

こちらは映像あり。Moving Onから連続した作品です。これまた素晴らしいトラック。この流れが好きならアルバム『Sweet Revenge』を買って間違いなし。おすすめはもちろんライブ版。




羽の林で

これはアルバム『音楽図鑑』収録の古い曲なんですが、95年のライブで再演された貴重なバージョン。あまりのかっこよさに伝説となった演奏です。一生ついていこうと思ったよね。
国籍不詳のニューエイジっぽい曲調に、ハードロック的な重たいドラミングとNord Leadの即興演奏が重なって、どこにもない、ここにしかない曲になっています。




A Day in the Park

ハウス的とも言えるけど、ビートはよりアフリカンにゴロゴロ鳴っていて、一聴したポップの奥深くに工夫をこらしたサウンドプロダクションが感じられる人気曲。これと近いような作品に「Heartbea」がありますが、こちらに軍配があがるんじゃないかな。これがお好きな人はそちらもどうぞ。




Behind the Mask

おまけ。YMO時代の曲を95年にやるとこうなります。普通にはちょっと伝わりづらいですか、これが坂本流のロックンロールとでも言うべき曲。個人的にはオリジナルのほうがずっと好きだけど、いつの時代にも演奏されるこの曲はそのときどきの坂本の嗜好の風向きを示す風見鶏として貴重なので紹介しました。




今回は、あえて同じタイプの曲を並べましたが、実際のライブのセットリストはもっと多様です。「戦メリ」「ラストエンペラー」「Sweet Revenge」といったピアノ曲や、「美貌の青空」「TANGO」といった南米音楽からの影響を消化したポップスなどなんでもござれ。坂本龍一という糊(グルー)がいなければ、こんなごった煮のライブはとても聴けなかった。それは本当に確かだろうと思います。

ちなみに、この時期以降の坂本龍一は、アントニオ・カルロス・ジョビンにより傾倒していったりしつつ、やがて名作アルバム『CHASM』に至るのですが、それはまた別の話。

DVDで観るなら


“sweet revenge”Tour 1994 [DVD]
坂本龍一
フォーライフ ミュージックエンタテイメント
2000-10-18


Sweet Revenge Tour

1. ムーヴィング・オン
2. 二人の果て
3. リグレット
4. パウンデイング・アット・マイ・ハート
5. ラヴ・アンド・ヘイト
6. スウィート・リベンジ
7. アンナ
8. サイケデリック・アフタヌーン
9. メリー・クリスマス・ミスター・ロレンス
10. M.A.Y.イン・ザ・バックヤード
11. トリステ
12. ウィ・ラヴ・ユー
13. シェルタリング・スカイ
14. ハートビート
15. 7セカンズ


D&Lライブ・アット武道館11・30・95 坂本龍一ツアー95D&L WITH 原田大三郎 [DVD]
坂本龍一
フォーライフ ミュージックエンタテイメント
2003-11-26


D&L

1. 美貌の青空
2. 愛してる,愛してない
3. Tango
4. 真夏の夜の穴
5. リハーサル
6. ブリング・ゼム・ホーム
7. ザ・ラスト・エンペラー
8. Rio
9. メリー・クリスマス・ミスター・ロレンス
10. 羽の林で
11. ネット・ライヴ
12. 電脳戯話
13. バレット・メカニック
14. ア・デイ・イン・ザ・パーク
15. Insensatez
16. センチメンタル
17. ハートビート
18. Ongaku
19. ビハインド・ザ・マスク
20. 美貌の青空(スペシャル・ヴァージョン)