29冊目 『夜の言葉』 アーシュラ・K・ル=グウィン
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内容は、ル=グウィンが1979年に書いた、ファンタジーとSFの評論集で、作家としての立場からフィクション(物語)の本質にせまっている。

『ゲド戦記』や『闇の左手』は、ル=グウィンが天才だから書けちゃった作品ではなく、作家としての自分を意識的に鍛え上げた結果として書けちゃった作品なんだな。だから、評論を書いても、上滑りせずにすぐれた内容を残せた。
この手の創作論やファンタジー論は、作家・村上春樹と評論家(ではないんだけれど便宜上そう呼ぶ)・河合隼雄が好んで取り上げていて、私も過去にそういったものをいくつも読んできたけれど、『夜の言葉』を読まずにそれらの本を何冊積み上げても意味がない。何回プールに通っても海に行ったことにならないのと同じように。
この本に関するレビューを検索しようとしても、ネット上ではあまり数を見つけられない。この本を読んで「なかなかよかったね」程度で黙っていられるわけがないので、おそらく、この本の読者であるべき人たちが、まだこの本のことを知らないのだろう。これを読む前の私がそうだった。もっと早く、襟首つかまれてでも、この本を薦められたかった。
立ち読みして決めたい人に送るメモ。
個人的なおすすめは「SFにおける神話と原型」と「書くということ」。
もし『指輪物語』が好きなら「見つめる目」「子どもと影と」は親しみやすいかもしれない。
しかし、こうした優れた評論をするル=グウィンがジブリの『ゲド戦記』を見たらそら失望するよね。
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