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海野弘の本に戻る。

『1914年』という本は、いまからちょうど100年前がどんな時代だったかを振り返り、いまを逆照射しようという企画。第一次世界大戦、宝塚少女歌劇、フェミニズム、クリムトとシーレ、特殊相対性理論とDNAの発見、青年期の新聞とラジオ、などなど扱う範囲は広い。

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雑多な話題が詰め込まれているが、海野弘はそこに独自の文脈を与える。そのときに博覧強記の哲人・海野弘ワールドの航海図のようなものが見て取れて非常におもしろい。

たとえば、機械論が優勢な19世紀末かれ20世紀初頭のなかで、手仕事による植物的なデザインにこだわったイギリスのウィリアム・モリス。そうした生命主義に魅かれた知識人として、ロンドンに留学した夏目漱石を捉えなおす試み。
また、1910年代の画家としてエゴン・シーレに光を当て直すとともに、そのフレームの中に竹久夢二ら日本の画家をいれて再考する試み。

そういった文脈をまたひとつ学ぶと、過去の名作散歩がまた楽しくなる。フィッツジェラルド作品からわかる1920年代のニューヨークの狂乱の前にあったのが、この1910年代のなんだなあ、とか。そう思って読み直すのは楽しい。