103冊目 「小林カツ代と栗原はるみ 料理研究家とその時代 」 阿古真理
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http://takushi.blog.jp/archives/52030725.html
これはおもしろい! 最近の新書ではお目にかかれないような密度で書かれた料理研究家史にして、近代の女性史。

妻の出産をきっかけに、もともと好きだった家庭料理に以前より真面目に取り組むようになったその結果、我が家の味みたいなのが、少しずつできてきた。無理なく続けられる習慣と、味の好みによって、繰り返し登場する定番料理が決まってくる。
写真に頓着がないためお目汚しですが、これはある日の朝ごはん。複数の常備菜を組み合わせを変えて食卓に並べたもの。
基本、あるもので作るだけではあるけれど、出汁と塩の味、甘辛い醤油味、昆布酢と野菜の味、ウスターソースと洋風出汁の味(上の写真でいうところ右下の豆がそうです)などの味の組み合わせが被らないようにし、材料も重複させない。こういうパズルは結構快感。
で、こういう家庭料理というのは、歴史があるようでないんだな、というのがこの本でよくわかる。母の味もあるし、祖母の味もあるし、地域の味もある。だけど、連綿と続く家庭料理の伝統なぞというものはないっていうね。時代や環境の影響を受けて、そのとき限りの家庭料理があるだけ。
本を読んだり、検索したり、人から教わったりしながら、そういう我が家の家庭料理を鍛えていく過程はおもしろい。
ちなみに、家庭料理の歴史はないと言ったけど、共通する「アトム」のようなものはあるようで、妻に言わせるとそれは干しシイタケらしい。言われてみれば確かによく使う。
最近はこんなレシピを発明してこれは当たりだなと思ったところ。
ミニマム豚汁(4〜5杯分)
・豚バラ200gを1センチ幅に切ったもの
・ネギの白い部分を2本ほど(青いところも使うなら1本でも)
・干しシイタケの戻し汁を4カップ(8枚から10枚程度を戻したもの)
・味噌 適量
調理方法
豚肉を、角にちょっとした焦げ目ができる程度に炒める。
1cm幅で斜めに切ったネギを加えすこし焼き目をつける程度に。
干しシイタケの戻し汁を加え、アクを取りながら中火でゆっくり煮立てる。
沸騰したら火を止め味噌を溶き、弱火にしてネギがお好みの柔らかさになったら食べる。
以上。
香りが出るゴボウ、甘みが出るニンジン、水が出る豆腐、食感のコンニャク、炭水化物のイモ類、これらを使わないのがポイントで、干しシイタケと豚の強烈な組み合わせを純粋に楽しむスープです。
家庭料理のレシピなぞえらそうに開陳するつもりはなかったのが、この本を読んでちょっと考え方が変わった。という話。
コメント
コメント一覧 (1)
新しい視点での「女性」が描かれていて興味深かったです。
表題にもなっている「小林カツ代」さんと「栗原はるみ」さんの対比と考察は「なるほど〜」と唸ってしまいました。
これからも、楽しみにしています〜