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十日間ほどお酒を断ってみたら、すこぶる調子がいい。早起きできるようになって、料理したり、運動したり、勉強したりする時間の確保が簡単になった。映画もよく観るようになった。そうするうちに体重も減ってきたし、いいことずくめ。これを続けたら、飲酒の習慣がなかった十年前の体重に戻すのも難しいことじゃないように思えてきた。

振り返るに、2018年というのは、あたしい職場であたらしい人々に出会い、あたらしい習慣を獲得した年だった。

1月 ル=グウィンが亡くなった


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PHOTO: DAN TUFFS/GETTY IMAGES


訃報に接し、真っ先に思い出したのは、僕を励まし続けたこのマントラ。僕はこの言葉を掛け値なしにまじでノートに抜き書きしていて、行き詰まる度に見返している。

良いですか。作家として、あなたは自由なのです。古今を通じて、およそあなたほど自由な人間はいないのですよ。その自由は、孤独で、寂しさで、勝ち取ったものなのです。あなたは、自分自身で決まりを、法律を作り上げる国にいるのです。あなたは、独裁者であると同時に従順な民衆でもある。その国は、これまで誰ひとりとして調査したことがないのです。地図を作り、街を建設するのは、ひとえにあなたの仕事です。この世であなた以外にその仕事ができる人間はいません。過去にもいませんでしたし、将来、再び同じ仕事ができる人間もいないでしょう。

アーシュラ・K・ル=グウィン

数々の作品、ありがとうございました。
ご冥福をお祈りいたします。

2月 僕らのネクロマンシー


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2016年から2017年にかけて書いた小説『僕らのネクロマンシー』を2月12日に発表した。なぜこの日だったかというと、それが祖母の命日だったからで、僕は刷り上がったばかりの本をもって一番寒い時期の遠野に行き、仏壇に最初の一冊をあげて、手を合わせて東京に帰ってきた。

刊行にあたって過去のインタビューを読み返したところ、もう5年も前に今作のモチーフを語っていて驚いた。

佐々木「小説を書いているときは、世間のニュースがあまり頭に入ってきません。そういうときよく思い出すのは、亡くなった祖母だとか、成人してからあまり会うことのなくなった兄弟だとか、本心を語る前に離れ離れになってしまった友人だとか、保留にしたまま整理のつかないとりとめのない出来事です。そういうことばかり考えてしまいます」 DOTPLACE

そう答えたことをすっかり忘れていたのに、気がついたらそういうことを書いていた。よっぽど書きたいことだったんだなと、我ながら不思議に思わされた感じ。

本に関する詳しいことは「ここ」に書いています。


3月 スマニュークーポン


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2018年は会社が大きく成長した年だった。過去の積み重ねの上に、さまざまなあたらしい要因が加わってこそのことなんだけど、今年を振り返ってどこかひとつだけポイントを指し示すとすればやはりここ。一年前と今とで、見える景色が劇的に違う。ただそのことだけをとってみても、間違いなく良い年だったと言える。

4月 息子が幼稚園に


息子の友だちを介して、家族ぐるみでのさまざまな付き合いが増えた。そのどれひとつとっても、得難く、とてもありがたいことだなと感じる。そうしたつながりによって「家族にしてもらった」という気さえする。

同じような時期に、柳田冨美子さんとお会いさせていただき、大きな刺激になった。冨美子さんがお生まれになった1919年と、その後の歴史についてよく考えるようになった。その影響については、いつかどこかで書き残したいと思う。

5月 遠野でリモートワーク


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会社のリモートワーク制度を使って、実家のある遠野に、5月の連休過ぎの時期に1週間ほど滞在した。この時期に帰省することはなかなかなく、実に貴重な機会になった。たとえば、こうして田んぼに水が張られるのは5月の半ば以降のことだから、こうした風景も一年のうちこの時期でなければ見られない。柔軟な働き方が許容されてありがたい。

6月 本棚プロジェクト



会社にある17個の会議室に17個の本棚を作ろう、というプロジェクトのオーナーを務めた。私の主担当はル=グウィン、副担当は濱田庄司(民藝)とゲイリー・ガイアックス(D&D)。好きなものについて深く考えるのは、当たり前だがすごく楽しかった。もちろん、他の人が深く傾倒するものを知れたのもすごくよかった。

7月 フジロック



一緒に行く仲間のキャンパーとしてのレベルが年々あがっていき、テントまわりで本当に快適で愉快な時間の過ごし方ができた。天気にも恵まれて、今年は過去最高レベルで楽しかった(もちろん毎年楽しい)。

8月 ホップ収穫祭



遠野のホップ畑で収穫祭。天候や環境がいいとか、飲み物がうまいということに加えて、遠野という土地でビールづくりを志す人々の熱量を感じられて、本当に楽しく、幸せな気分になった。

9月 ニューヨークとオースティン


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予習。 #ニューヨーク

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スマートニュースのニューヨークオフィスに行き、その後、ONAに参加するためにオースティンへ。どちらも初めてだったので、はりきってニューヨークに関する小説を復読するなどした。ただ、いま振り返って一番心に残っているのは、ライドシェアのスクーター(Lime-s)に乗り、同僚3人でオースティンの街を走り回ったこと。車でも徒歩でもないスピードで、かつ会話をするでもなく、互いに風を切りながら見知らぬ町を縫って走るのはなんとも言えず楽しかった。

10月 小説を書きはじめた



ある日ふと、「これは書けそうだ」とひらめいて新作に取り掛かった。タイトルは『湖の中で戦争がはじまる』。たぶんかなり時間がかかるけど、ゆっくりとこのあたりで公開していくつもり。

11月 器を愛でる会と、Shokki Pick Orchestra



今年後半は、器好きの仲間による集いが増えた。器を愛でる会とか、Shokki Pick Orchestraとか呼び方はさまざまだけど、好きな器を持って実際に見せたり触ってもらったりと、そういう集まり。本や映画の感想を交換するのと違って、難しいことがまったくないのがいい。形や色や手触りや重さを味わって、ただ褒め合うだけというね。上の写真は今年手に入れたお気に入り。

12月 SmartNews Video


スマニューで、何気なそうに、でも本格的に動画を扱うようになった。来年、これをどう育てていけるかが大きな関心ごとで、近頃はそればかり考えている。

さて最後に、2018年に買ってよかったものとしてぱっと思い浮かんだものを。



人がどのように世界を見て、どのように言葉にするか。ということについて、自分の常識の外側からゆさぶりをかけられた。僕にとっては、「物語る」ことについての可能性を感じさせてくれる希望の本だった。



マキタの掃除に取り付けた途端、掃除機をかけるのが大好きになった。それまでは箒やクイックルワイパーのほうが好きだったのに、これひとつで宗旨変え。すごいインパクトがあった。