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『ゆかいな仏教』を読んだ

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橋爪大三郎と大澤真幸というふたりの社会学者(仏教徒ではありません)が、古今東西の宗教や哲学を引き合いにして縦横無尽に仏教を論じるている一冊。
現代人にとって仏教を理解することにどんな意味があるのか、という視座に立って、あくまでわかりやすく、かつ、おもしろおかしく対談しています。音声で聞いてみたいと思うような、痛快な内容でした。



帯には小難しそうな名前がずらずらあがってますが、内容はいたってわかりやすい。ときにゲラゲラという笑い声が聞こえてきそうなほど。

ゆかいな仏教 (サンガ新書)
橋爪大三郎
サンガ
2013-10-28



関連する本




「女のいない男たち2 - イエスタデイ」(村上春樹)

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先月号の文藝春秋に掲載された「ドライブ・マイ・カー」には「女のいない男たち」という副題がついていたので、もしかしたらとは思っていたのですが、今月号になって連作短編のシリーズものだということがわかりました。今月号に掲載されたのは、「女のいない男たち2 - イエスタデイ」です。



正直にいって自分はあまり楽しめなかったのですが、「10代のときのプラトニック・ラブが、成熟してからのエロスを阻害あるいは燃焼させる」という定番のモチーフに注目すれば、そのバリエーション(変奏)の歴史を振り返ってニヤリとはできるかもしれません。

まとめるとこんな感じ。

 『風の歌を聴け』 … 僕と直子
 『ノルウェイの森』 … キズキと直子
 『国境の南、太陽の西』 … 僕と島本さん
 『海辺のカフカ』 … 佐伯さんとその恋人
 『1Q84』 … 青豆と天吾

しかし本当に執拗に繰り返し登場するモチーフですねえ。



なんだか元気そうでした。 - 桜玉吉の『漫喫漫玉日記 深夜便』

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『幽玄漫玉日記』から『御緩漫玉日記』にかけて鬱病を患ったことを契機に、私小説風の日記漫画として独特の進化を遂げたギャグ漫画家・桜玉吉。その最新刊『漫喫漫玉日記 深夜便』が出ました。まずはAmazonの内容紹介からご覧ください。

我らが兄貴! 桜玉吉が帰ってきた!! 見事、社会復帰を果たした完全新作登場!!

皆様、お待たせしました!! 長期に渡り体調を崩していた桜玉吉が、やっと筆をとり短編漫画を発表!! それから2年半、コミックビームに掲載された作品が、ついにコミックス化!!

作品のよりも、その生き様が心配されているという不思議な紹介文。「あわせて読みたい」に表示される吾妻ひでおの『失踪日記』はレコメンドの精度としてきわめて正しいですね。

近頃は漫画喫茶に住まっていたということで、それはそれで大丈夫なのかという気がいたしますが、漫画の雰囲気からするとなんだか元気そうです。そして元気になっても、作風とおもしろさはそのまま。あいかわらず。声に出して笑った。



「しんやびん」ではなく、「しんやべん」と読むのが正しそう。

ダ・ヴィンチ 2014年 1月号を読んで買った本のメモ(京極夏彦の新シリーズ、他)

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今月号の「ダ・ヴィンチ」を読んで買った本のメモ。
年末年始の休暇に向けて読みごたえあるやつを注文した。

書楼弔堂 破暁


「京極堂シリーズ」や「巷説シリーズ」と同じくらいの力の入り具合を感じさせる京極夏彦の新シリーズ。「しょろうとむらいどう はぎょう」と読みます。なんとまあとっつきにくい。

時代は明治。舞台は古書店。そこに、月岡芳年、泉鏡花、井上圓了、勝海舟の他、京極堂シリーズの登場人物もからんでくるんだとか。ということは今後、巷説シリーズの流れも汲んで、江戸と昭和をつなぐミッシングリンクをつないでくるはず。ワクワクがとまらない。

書楼弔堂 破暁
京極 夏彦
集英社
2013-11-26


全部一気読みするには、単行本版を買わないといけない仕掛け。



Kindleには、第一話の冒頭までをじっくり読める無料体験版がある。この冒頭部分で主要な世界観が示されるので、これでおもしろいと思うなら本編を買うべし。



そしてこちらは、期間限定配信の第一話のみバージョン。なんと99円! ペットボトルの水より安いんだからとりあえず買って損なし。そして自分はこれでまんまとハマった。この新シリーズ期待できる!

皆勤の徒


大森望と豊崎由美が大絶賛していたSFの連作短編集。

皆勤の徒 (創元日本SF叢書)
酉島 伝法
東京創元社
2013-08-29


表題作はKindleで先行リリースされて話題になっていましたが、その世界観がより掘り下げられ、通読するとあっとおどろく仕掛けもあるんだとか。



Kindleでは表題作のみ100円で買えます。未読の人はまずはこれからどうぞ。

舞台はどことも知れぬ惑星。数百メートルの巨大な鉄柱に支えられた小さな甲板。そこに“会社”が建っている。語り手は日々、そこで異様な有機生命体を素材に商品を手作りする。雇用主である社長は“人間”と呼ばれる不定形の大型生物だ。甲板上と、それを取り巻く泥土の海だけが語り手の世界であり、そして日々の勤めは平穏ではない。はるか泥土の海を渡って襲い来る“外回り営業”との戦い、脳裏にフラッシュバックする、自分のものかどうか分からぬ記憶……。そしてこの惑星自体が、最終的に何かを生み出すために存在したのだった。

イメージすることすら難しい異様な世界観のSFですが、描かれているのはサラリーマン。多くの人が共感可能な社畜が主人公です。

図書館の魔女


これも大森望と豊崎由美が大絶賛していたもの。





こういうビブリオ系には弱い。

鍛治の里に暮らす少年キリヒトは、師の命により、大陸最古の図書館を統べるマツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声をもたないうら若き少女だった。本を愛し、言葉の力を信じるすべての人に!

ちなみに、今見てみたらAmazonでは一時品切れ中。在庫が薄そうなので、年末年始に読もうという人は早めに注文したほうがいいかも。

『旅のラゴス』で筒井康隆にハマりそう

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筒井康隆をろくに読んでこなかったことに対して、後ろめたさを感じてたんですよね。尊敬する人が「やっぱ筒井康隆はおもしろいよね」といったときに食い付けない自分の不勉強さが嫌で。

いつか読もう読もうと思いながらすでに30代も半ばですが、これまでに読んだことがなかったわけじゃないんです。『七瀬ふたたび』(1975年)と『敵』(1998年)のふたつ……。もちろんこれも悪くなかったんでしょうが、その作家世界を探求しようと気にはならなかった。入り口を間違えたんですな。

そこで『旅のラゴス』です。

端的に言って、刺さりました。
読後のいま、筒井康隆のこともっと知りたくてたまらない状態です。

旅のラゴス (新潮文庫)
筒井 康隆
新潮社
1994-03-01


きっかけはAmazonオールタイムベスト小説100という企画。ここで取り上げられていた唯一の筒井康隆の小説ですが、全作品を読んだファンにしてみれば「なぜこれが?」という思いがあるかもしれません。しかしこうして選ばれるにはなんか理由があんだろうということで読んでみました。

   *

事前にイメージしていた、筒井康隆らしい奇抜なSFという予想は裏切られ、これでもかというくらいにシンプルな物語でした。旅に出て、帰ってくる。でも戻ってきた自分は元のままの自分ではないというただそれだけの話。“ゆきてかえりし物語”といえばあらゆるお話の基本で、『桃太郎』や『西遊記』や『ホビットの冒険』なんかがそうですね。ある人物が生まれた土地を出て、いろんな人間に出会い、望むものを手に入れて戻ってくる。『旅のラゴス』もただそれだけの小説です。

でもそういうごまかしのきかない物語だからこそ、筒井康隆のおもしろさがよくわかったような気がします。

発展しすぎた文明や科学に対するシニカルな目線。知性や教養に対する深い信仰。残酷な仕打ちをする場合にも表情を変えず、人を抱腹絶倒させる場合にも表情ひとつ変えない不気味さ(しかしそのことによって恐怖や笑いが増幅されることを知り抜いている)。
また、連載小説というスタイルのせいか、書き飛ばしたかのような隙のある文章も出てくるんですが、基本となる文体は非常にオーソドックスで、かつ、古典に裏打ちされた安心感があって非常に読みやすい。好みでした。

物語のプロットはシンプルそのものですが、挿入されるエピソードには寓意がたっぷり含まれていて、読んでいるうちに自分の心をのぞいているような気持ちになりました。銀鉱で奴隷となった青年時代、人生の目的に到達し学者として大仕事を成し遂げる壮年時代、我が家に帰還しふたたび人生を取り戻す老年時代。主人公のラゴスが、最晩年になってその失われた青春の喪失に気づく場面では、胸がふさがれるような思いをしました。こうしたごくさりげない詩情も、筒井康隆の魅力なのでは。

というわけで、これから本格的に他の作品も読んでみようと思います。
おすすめがあったら教えてください!

関連リンク


【筒井康隆】 入門者向け作品! 14選 まとめ 【SF小説】
http://matome.naver.jp/odai/2136724494221528101

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