『天地明察』を読んだ
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囲碁や数学や江戸時代に興味のあるものにとってたまらない登場人物たちですね。
そしてこの表紙。



上段が単行本版。下段が、文庫版およびKindle版です。
まず小説のタイトルがいい。さらに題字からは風格と親しみの両方が感ぜられる。良質な小説のにおいがする、すごくいい表紙です。
しかしこの作品、実は「時代もののラノベ」のようなものなんですね。
そういうものだと思って読んだ人や、途中でそうだと思い直した人(わたしです)は楽しめるようですが、表紙から受ける印象で「本格時代小説」や「文学」だと思ってしまった人はどうやら期待を裏切られたと感じてしまうようです。
随所に見られる単語の誤用、そして歴史小説にそぐわない軽薄な言葉遣いが物語の面白さに水をさしている。不必要な背伸びをしている様子が感じられてならない。
物書きに求められるもの - 長距離かけ太郎 "陸上小僧"
調べたことを、深く理解せず、自分の言葉として文章に起こさず、そのまんま羅列したって感じでした。
期待しすぎた - ともさん
文章中に「がっくり来る」などおよそ文章語と思えない言葉が登場する。品格に欠ける。
低価値・低品質の小説 - kh生
言葉遣いがおかしい。現代語と当時の言葉が入り交ざってる所が見受けられた。
挫折組みです。 - 天奈
キャラが立っている、とかいう向きもあるようだけれど、キャラを立たせれば立たせるほど薄くなるのが人物像。作者の人間観の幼稚さが透けて見えてしまう人物造形としか言いようがない。
通勤電車内暇つぶし読書向け小説 - ヒヨコ
愛妻ことの扱いも、「私は幸せでございました」と言わせるばかりで芸がなく、まるで記号のようでした。
まずまずでした - yosnoiz
江戸の数学者が主人公という着眼点は斬新でした。しかし登場人物は皆あまりにアニメ的な造形で、物語の深みも何もありません。文章も個性がなくおもしろくも何ともありません(中略)ジュニア小説かと思いました。
発想は良いが内容は凡作 - ニコ
あらすじを読んだとの感想です。文学とは感じ得ませんでした。
文学? - inbi
まさに、プロットを読まされてる感じ
『とある囲碁打の改暦記録(プロット)』 - ぺそあ
小説の軸になっているのは、「安井算哲」と「渋川晴海」というふたつの名前を行き来する主人公の人生であり、それらの名前が代表する「囲碁の世界」と「天文学の世界」が絡み合いつつ統合へ向かう物語である……ということになるのでしょうが、その試みは構想段階で潰えてしまっています。特に物語の後半は、事実のおもしろさに負けてあらすじを追うだけの内容。題材のおもしろさはピカイチなだけにとても残念です。
しかし、ラノベらしくキャラクターのおもしろさが際立っているところがあり、そこは非常に印象的です。おもしろみのない善人ばかりの登場人物のなかにあって、特に異彩を放っているのが水戸光圀と関孝和。
これは、渋川晴海と水戸光圀が初めて出会った場面です。
あたかも水面に映る月影を見るがごときで、触れれば届くような親密な距離感を醸しながら、それでもなお水面の月を人の手で押し遣ることは叶わないことを思い起こさせる。
続いて、関孝和との邂逅かなったあと、ふたりの人生の交錯を表現した場面。
関は満足そうにうなずき、そして笑った。その様子に春海は胸を衝かれた。この天才が浮かべるには、あまりに寂しく、孤独な表情だった。ともに歩めたかもしれない道のりを、全てを背負って春海だけがゆくのを見送る者の顔だった。
題材といい、表紙といい、メディア展開や二次創作の余地を多分に残したキャラクター中心のプロット仕立てといい、「商品」としてはとてもすぐれた本という印象。ページ数の多い小説ですが、ちょっとした時間をつなぎ合わせて目を通すのにはちょうどいいので、そういう本を探している人におすすめです。