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なんだか元気そうでした。 - 桜玉吉の『漫喫漫玉日記 深夜便』

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『幽玄漫玉日記』から『御緩漫玉日記』にかけて鬱病を患ったことを契機に、私小説風の日記漫画として独特の進化を遂げたギャグ漫画家・桜玉吉。その最新刊『漫喫漫玉日記 深夜便』が出ました。まずはAmazonの内容紹介からご覧ください。

我らが兄貴! 桜玉吉が帰ってきた!! 見事、社会復帰を果たした完全新作登場!!

皆様、お待たせしました!! 長期に渡り体調を崩していた桜玉吉が、やっと筆をとり短編漫画を発表!! それから2年半、コミックビームに掲載された作品が、ついにコミックス化!!

作品のよりも、その生き様が心配されているという不思議な紹介文。「あわせて読みたい」に表示される吾妻ひでおの『失踪日記』はレコメンドの精度としてきわめて正しいですね。

近頃は漫画喫茶に住まっていたということで、それはそれで大丈夫なのかという気がいたしますが、漫画の雰囲気からするとなんだか元気そうです。そして元気になっても、作風とおもしろさはそのまま。あいかわらず。声に出して笑った。



「しんやびん」ではなく、「しんやべん」と読むのが正しそう。

描線の行く末を眺めているだけで楽しい! セルジオ・トッピの『シェヘラザード』

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イタリアの漫画家で、セルジオ・トッピという人の千夜一夜物語『シェヘラザード』を読みました。

「アラビアン・ナイト」として知られる、『千夜一夜物語』を詩的なコミックとして作品化したものが本書なのですが、19世紀末のヨーロッパ美術(シーレやクリムト)の影響を受けたイタリアの作者が1970年代末に発表したという経緯もあり、原作が持っていた教訓集という側面は鳴りを潜め、耽美的な詩画集といったような趣になっています。

モノクロと寒色で描かれる詩的な「千夜一夜物語」。『シェヘラザード』 - BOOK NEWS
http://www.n11books.com/archives/34039921.html

話の筋はシンプルだけど、画面の構図が斬新で、読むのにすごく時間がかかった。読むというか、線の行く末を眺めているだけで知らず知らず時間が経っていく感じ。












天野喜孝だの山田章博だの初期の高橋葉介だのそういう名前が思い浮かびました(小並感)。影響という意味で、あっているのどうかわかりませんが、すごい漫画でした。BD(バンド・デシネ)とか読みづらくてつらいと思うほうなんですが、かなり楽しめまた。現代の日本の漫画家と言われても違和感ない。

シェヘラザード ~千夜一夜物語~ (ShoPro Books)
セルジオ・トッピ
小学館集英社プロダクション
2013-09-28


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夏休みの読書の宿題第四弾。

先月だったか、ふと思い出して夏目漱石の『坊っちゃん』を再読したらえらいおもしろくて、また、その悲しさにあてられてものがなしい気持ちになっていました(おすすめですよ、ほんと)。

それで夏目漱石のことを調べだしたら、こんな本があるじゃないですか。

『坊っちゃん』の時代 (双葉文庫)『坊っちゃん』の時代 (双葉文庫)
著者:関川 夏央
販売元:双葉社
(2002-11-12)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

イギリスから帰国した夏目漱石が『坊っちゃん』の構想を練っていく過程と、近代化の揺籃期を迎えた明治日本の精神的隘路にぶつかった人々の戸惑いを重ね合わせた、まぎれもない名著(漫画)でした。
構想が優れているのはもちろんだけど、谷口ジローの絵がまた素晴らしくて、その絵の素晴らしさが独特なユーモア(もっといえばギャグ漫画)になっています。教養的なこと一切抜きでもおもしろい。

『坊っちゃん』は悲しい小説です。

というのは小説を読むとわかるんだけれど、坊っちゃんをアニメでしか見たことのない人は、痛快娯楽作か、古き良き明治の童話(と言っていいんじゃないかな)みたいなイメージを持ってしまっているんじゃないですかね。もしそのように誤解している人にとっては、この本はさらにおもしろいと思います。

しかし、こんなおもしろい漫画を今まで知らなかったなんて。
自分の不明を恥じる次第です。

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ちなみに、文庫版の解説は高橋源一郎。『日本文学盛衰史』の原点は、この『「坊っちゃん」の時代』であったと語っています。なるほどそうだったのか。

日本文学盛衰史 (講談社文庫)日本文学盛衰史 (講談社文庫)
著者:高橋 源一郎
販売元:講談社
(2004-06-15)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

途中まで読んで放り投げてしまったけど、もう一度読もうっと。

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完結したスティール・ボール・ランを一気読みした。

冷静に考えると突っ込みどころ満載の設定(だがそれがいい)と、それを不問にする絵と言葉の圧倒的な魅力。歴代の人気キャラクターのいいとこ取りをして、ジョジョらしさが高濃度に圧縮された最高に荒木飛呂彦らしい作品で大満足。


STEEL BALL RUN スティール・ボール・ラン 24 (ジャンプコミックス)STEEL BALL RUN スティール・ボール・ラン 24 (ジャンプコミックス)
著者:荒木 飛呂彦
販売元:集英社
(2011-06-03)
販売元:Amazon.co.jp
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物語のフォーマットはたぶん指輪物語やどろろ。王道のストーリーだからこそ、ジャイロ(ジョセフ・ジョースターの化身みたいな感じだったですね)やディオや大統領、そしてリンゴォのようなキャラクターの魅力がストレートに活かされてたと思う。

しかしなんといっても印象的だったのは主人公のジョニィ・ジョースター。喪失を背負った主人公が、最終的には勝利ではなく敗北によって、その喪失を回復する様が、何とも言えずよかった。ふつうの人間のひとりとして、共感できるキャラクターだった。

それと、ジョニィの喪失からの回復は、物語全体のテーマ(「幸福になる人間がいれば同じだけ不幸になる人間がいる」「プラスとマイナスでゼロになる」といったもの)とフラクタル構造にある。細かいことをいえば突っ込みどころ満載の設定がたくさんあっても、全体的に説得力があるのはそのせいだとい気がする。さすが。最高。

第8部の『ジョジョリオン』も楽しみ。

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