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48冊目 『ファンタジーと言葉』 アーシュラ・K・ル=グウィン

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前回からの続き。

ゼロ年代に出た評論集『ファンタジーと言葉』。これは素晴らしかった。インターネットや電子書籍にも言及している、『夜の言葉2』といってもよい内容。これこれ、こういうのを読みたかった!

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なかでも「〈事実〉そして/あるいは/プラス(フィクション)」と「操作説明書」と「わたしがいちばんよくきかれる質問」などはおすすめ。最後のは特に!

もし自分にそんな権利があるのであれは、これら2冊から最良のものを集めて『夜の言葉 完全版』を編みたいと夢想した。
それは、ファンタジーやフィクションを好む人に向けられたものではなく、実用書しか読まない(そしてむしろそれでいいと思っている)ビジネスマンに向けられたものになるはずだ。ビジネスの世界では、詩や物語が軽視され過ぎていて、昼の言葉でのみ物事が語られる。夜の言葉でも語ろう。


ファンタジーと言葉
アーシュラ・K. ル=グウィン
2006-05-24

47冊目 『いまファンタジーにできること』 アーシュラ・K・ル=グウィン

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日本語で読めるル=グウィンの評論・エッセイ集は4冊あって、最初の1冊は70年代に、あとの3冊はゼロ年代に出た。これはその後半のうちのひとつ。

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最初の1冊『夜の言葉』に感激して残りも読にはじめたものの、『世界の果ててダンス』もこの『いまファンタジーにできること』も、個人的にはピンとこなかった。

思うに、『夜の言葉』がもっとも優れていたのは、フィクションを物語ることの理論と実践がいきいきと描かれていたところにあったと思う。その素晴らしさが、世にまだ認められていないことから生じる反骨心もまた、読み手の心に訴えるものがあった。

(つづく)


いまファンタジーにできること
アーシュラ・K・ル=グウィン
2011-08-20

38冊目 『世界の果てでダンス』 ル=グウィン

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ル=グウィンの評論集『夜の言葉』にいたく感激してその他の評論にも手を出してみた。が、全体に散漫な印象を受けて気持ちが乗ってこなかったことを正直に告白します……。

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評論集はこのほかにあと2冊。それもこのあと読む。


世界の果てでダンス
アーシュラ・K. ル=グウィン
2006-12

29冊目 『夜の言葉』 アーシュラ・K・ル=グウィン

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至高の一冊。これは自分のために書かれた本だなという勘違いまでさせてくれた。
内容は、ル=グウィンが1979年に書いた、ファンタジーとSFの評論集で、作家としての立場からフィクション(物語)の本質にせまっている。

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『ゲド戦記』や『闇の左手』は、ル=グウィンが天才だから書けちゃった作品ではなく、作家としての自分を意識的に鍛え上げた結果として書けちゃった作品なんだな。だから、評論を書いても、上滑りせずにすぐれた内容を残せた。

この手の創作論やファンタジー論は、作家・村上春樹と評論家(ではないんだけれど便宜上そう呼ぶ)・河合隼雄が好んで取り上げていて、私も過去にそういったものをいくつも読んできたけれど、『夜の言葉』を読まずにそれらの本を何冊積み上げても意味がない。何回プールに通っても海に行ったことにならないのと同じように。

この本に関するレビューを検索しようとしても、ネット上ではあまり数を見つけられない。この本を読んで「なかなかよかったね」程度で黙っていられるわけがないので、おそらく、この本の読者であるべき人たちが、まだこの本のことを知らないのだろう。これを読む前の私がそうだった。もっと早く、襟首つかまれてでも、この本を薦められたかった。

立ち読みして決めたい人に送るメモ。
個人的なおすすめは「SFにおける神話と原型」と「書くということ」。
もし『指輪物語』が好きなら「見つめる目」「子どもと影と」は親しみやすいかもしれない。

しかし、こうした優れた評論をするル=グウィンがジブリの『ゲド戦記』を見たらそら失望するよね。


夜の言葉―ファンタジー・SF論 (岩波現代文庫)
アーシュラ・K. ル=グウィン
岩波書店
2006-05-16

21冊目 『イシ―北米最後の野生インディアン』 シオドーラ・クローバー

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ルバング島から帰還した最後の日本兵・小野田寛郎さんを思い浮かべなから読んだ。迫害からただひとり生き残ったネイティブ・アメリカンのイシが、タイムマシーンよろしく突如近代にあらわれたその衝撃を想像しつつ。
ただ実際には、それより悲惨で、それよりもユーモラスだった。

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ちなみに、著者はアーシュラ・K・ル=グウィンの母。新装版にあたってル=グウィンによるまえがきが追加されていて、本書の意義があらためてアップデートされているのも見所。好んで読んだ『ゲド戦記』や『大草原の小さな家』シリーズをより深く理解するためにもいい読書体験だった。



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