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村上春樹の『小澤征爾さんと、音楽について話をする』という対談がとてもおもしろかったので(感想をまとめた記事「ディレクションという言葉がありますよね」はこちら)、続けて3冊、小沢征爾の本を読んでみました。


ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)ボクの音楽武者修行 (新潮文庫)
著者:小澤 征爾
販売元:新潮社
(2002-11)
販売元:Amazon.co.jp
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「外国の音楽をやるためには、その音楽の生まれた土地、そこに住んでいる人間をじかに知りたい」という著者が、スクーターでヨーロッパ一人旅に向かったのは24歳の時だった……。ブザンソン国際指揮者コンクール入賞から、カラヤン、バーンスタインに認められてニューヨーク・フィル副指揮者に就任するまでを、ユーモアたっぷりに語った「世界のオザワ」の自伝的エッセイ。

いやもうこんなにおもしろい自伝はまたとない。スターウォーズでいえば第1作『新たなる希望』のような、前途洋々たる若者の青春活劇。あまりにおもしろくて、もう2回も通読しちゃいました。

小沢征爾がなぜこんなにおもしろい自伝が残せたか、という秘密のひとつは、家族への手紙。家族思いで筆まめな氏が、せっせと書き送った手紙が家族のもとで大事に保管されており、それを元に書き起した自伝だからこそ、瑞々しさと親しさに満ちた素晴らしい内容になっています。


同じ年に生まれて―音楽、文学が僕らをつくった (中公文庫)同じ年に生まれて―音楽、文学が僕らをつくった (中公文庫)
著者:小沢 征爾
販売元:中央公論新社
(2004-01)
販売元:Amazon.co.jp
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小澤征爾と大江健三郎。活躍する世界は異なるが、1935年の同年に生まれた彼らは、中学3年のときに現在の仕事を目指し、若手芸術家として時代の先端を走り続け、粘り強く仕事を重ね、世界的にもっとも評価される日本人として自らの人生を築き上げてきた、という点で共通している。本書は40年来の友人である彼らが、青春時代、家族、教育、民主主義、音楽と文学、共通の友人武満徹、そして未来について、縦横に語り合った対談集である。

この本の存在をついこないだまで知らなかったんですが、村上春樹の『小澤征爾さんと、音楽について話をする』は、実はこれと同じようなフォーマットだったんですね。

大江さんとの対談本と、村上さんとの対談本の間には結構時間が空いているけれど、その会話の中の小澤さんの印象は、ほとんど変わらない。少なくとも自分には見分けがつかない。

特に印象的だったのは、「ディレクション」について語りだす部分。前の感想にも抜き書きしましたが、ここは指揮の神髄といった感じで、非常におもしろいお話です。

さらに、小澤さんが話す内容には平年劣化しない芯があり、それによって、小澤征爾・大江健三郎・村上春樹の3名が時を超えて対談している、という風にも楽しめます。いい本でした。


音楽  新潮文庫音楽 新潮文庫
著者:小澤 征爾
販売元:新潮社
(1984-05)
販売元:Amazon.co.jp
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音楽との出会い、恩師カラヤンやストラヴィンスキーのこと、現代音楽の可能性日本を代表する音楽家二人の鋭い提言。

こちらは武満徹との対談本。村上春樹・大江健三郎と比べると、自分がその作品に親しんでいないため、いまいち楽しめませんでした。が、まだ無名だった武満徹の作品をストラヴィンスキーが見出す成功譚の話はおもしろかったし、現代音楽家としてのアイデンティティの不安を口にする武満氏を小澤氏が励ます下りも、ぐっときました。

というわけで、ストラヴィンスキーが見出した最初の曲「弦楽のためのレクイエム」を、小澤征爾が指揮している動画を貼り付けておきます。



なんか難しいぞ、これは…。