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プロ雀士の吉田光太さんの推薦で、白川道さんの『病葉流れて』を読みました。阿佐田哲也の『麻雀放浪記』のような麻雀小説で、ハードボイルドでピカレスクな作品です。

印象に残ったのは、主人公のお師匠さん役である永田という先輩の一節。

『病葉流れて』(文庫版 p52)

俺たちは今まで、目に見えるものや手で触れるもの、あるいは数値や論理で立証されたものだけが絶対だと教え込まれてきた。つまり、意味があるものだけがすべてというわけだ。しかし、ほんとうにそうだろうか

病葉流れて (幻冬舎文庫)病葉流れて (幻冬舎文庫)
著者:白川 道
販売元:幻冬舎
発売日:2004-08
おすすめ度:4.0
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これを読んで思い出したのは、『まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか』の一節。

『まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか』(p315)

私たちは、目に見えるものや組み込まれたもの、個人的なもの、説明できるもの、そして手にとってさわればわかるものが好きだ。私たちのいいところ(美意識や倫理)も悪いところ(たまたまなのにその気になる)も、みんなそこから湧いて出ているように思う。

まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのかまぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか
著者:ナシーム・ニコラス・タレブ
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2008-02-01
おすすめ度:3.5
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なんだこの類似性は! と驚いて調べたら、著者の白川道さんは、作家になる前に株式投資顧問会社を経営されていました。
なるほどやはり、投資の世界と麻雀の世界には共通点があって、違う道から同じ哲学に至るってことなんでしょうか。

関連記事:『まぐれ』から『心温かきは万能なり』まで

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『インフォコモンズ』を読みました。


インフォコモンズ (講談社BIZ)インフォコモンズ (講談社BIZ)
著者:佐々木 俊尚
販売元:講談社
発売日:2008-07-17
おすすめ度:3.0
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この本には、ネットの世界に起こりつつあること/起こるかもしれないことが書かれているわけですが、そういうことよりもむしろ、佐々木俊尚さんらしいロマンティシズムと文学的な表現を楽しんで読みました。良書です。

なので、専門的なテーマの割には、ネットの世界に詳しくない人にもスラスラっと読めちゃうかもしれません。そしてできれば、そういう人の感想こそ聞いてみたい。『インフォコモンズ』のような世界をどう思うのか。ネット業界の人が思う当たり前との距離が知りたい。近いってことは、たぶん、ないんじゃないかな…。


関連リンク
「インフォコモンズ」読了 - チミンモラスイ … まとめ上手と言えば
ソーシャルメディアとしてのケータイ小説 … 佐々木俊尚さんらしいロマンティシズムと言えば

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借日記 [CHAKUNIKI] : それ考えてないだけでしょ?』で推薦されていた『考えないヒント』を読みました。


考えないヒント―アイデアはこうして生まれる (幻冬舎新書)考えないヒント―アイデアはこうして生まれる (幻冬舎新書)
著者:小山 薫堂
販売元:幻冬舎
発売日:2006-11
おすすめ度:4.0
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小山薫堂」さんという名前は意識したことがなかったのですが、調べてみたらかなりいろんな番組でお世話になっていました。なかでも『ニューデザインパラダイス』が好きでした。

そのまさに『ニューデザインパラダイス』的なことも本には書かれていて、アイデアを生み出すヒントとして『「当たり前」をリセットする』といったテクニックが紹介されています。
「やかん」とか「横断歩道」とか「うちわ」とか「湯たんぽ」とか、当たり前だと思っているカタチやデザインのものを宇宙人が見たらどう思うか、という目線で捉えなおしてみるという考え方ですね。

ってことで『ニューデザインパラダイス』の過去の放送を調べてみたら、「将棋」がテーマになっている回がありました。



これが生まれ変わった将棋盤だ!

表面:アクリル透明、シルバーシルク印刷
裏面:アクリル黒で塗装、文字は金色でシルク印刷。字体は中国文字を使用しており強さが表現されています。

すごい。
将棋の盤と駒という「当たり前」を疑うのもすごいし、将棋好きから見ても本当にいい作品になってるのもすごい。いたずらにもて遊んでいるだけじゃない、という。


本のタイトルの『考えないヒント』は半分ダジャレのようなものでしたが、「運や縁をいかに招くか」という話が中心だったので、半分は本当です。
アイデアを生むための具体的なテクニックではなく、「とにかく人に話しかけること。これも、偶然力を鍛える格好のトレーニングになります」といったメッセージがコアになっていました。

ちなみに、「運をコントロールするには世界そのものに働きかけるしかない」みたいなことを書いたばかりだったので(参照「『まぐれ』から『心温かきは万能なり』まで」、このあたりはシンパシーをもって読みました。

というわけでおすすめの本です。
ついでに元ネタのほうもおすすめ。


考えるヒント (文春文庫)考えるヒント (文春文庫)
著者:小林 秀雄
販売元:文藝春秋
発売日:2004-08
おすすめ度:4.5
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『納棺夫日記』を読みました。


納棺夫日記 (文春文庫)納棺夫日記 (文春文庫)
著者:青木 新門
販売元:文藝春秋
発売日:1996-07
おすすめ度:4.5
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関連して思い出したのは『豆腐屋の四季』。


豆腐屋の四季―ある青春の記録 (講談社文庫)豆腐屋の四季―ある青春の記録 (講談社文庫)
著者:松下 竜一
販売元:講談社
発売日:1983-01
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共通点は、「専業の物書きに憧れつつも夢破れて市井の職業人になった著者が、生活の合い間に日々の思いを書き残し、それが後に作品として出版された本」であるということ。

もちろんこれらの著者は、ただ日記を書いていたわけではありません。「納棺夫」の場合は出版業の知り合いのツテをたどって、「豆腐屋」の場合は新聞の川柳コーナーへの投稿という行為を通して、出版の機会を得ています。

こういった狭き門へ挑む努力を可能にしているのは、「内なる表現欲求」と「物書きへの憧れ」だろうと思います。その結果、私たちはその作品を読者として楽しめるわけです。ここには、書き手とメディアと読者が機能する美しい装置が働いています。

一方、今日において文章を書きたいと思うような人は、まずもってブログを開設するんだろうと思いますが、残念ながら、現在の(メディアとしての)ブログサービスは、その先の道に憧れを抱かせるような演出に成功していません。
優良な記事を書きまくるブロガーが、単なるアフィリエイターと紙一重に見えてしまうとしたら、その責任はメディアやサービス提供者の側にもあるような気がします。


かつて私も担当としてちょっと関わっていた企画として、こんな試みがありました。

ココログ新年会で「ココログブックスコンテスト」受賞作品が発表(2005/01/24)

1月22日、@niftyのブログサービス「ココログ」のユーザーが集う交流イベント「ココログ新年会」が都内で開催された。イベントでは書籍として出版する優秀ブログを決める「ココログブックスコンテスト」の結果も発表され、フクダカヨ氏による「フクダカヨ絵日記」が選ばれた。

傘が首にかかってますけど  フクダカヨ絵日記 (ココログブックス)傘が首にかかってますけど フクダカヨ絵日記 (ココログブックス)
著者:フクダ カヨ
販売元:インフォバーン
発売日:2005-03-14
おすすめ度:4.5
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ブログを本にしようというアイデアそのものは、昔っから誰もが思いつくソリューションなのですが、「内なる表現欲求」と「物書きへの憧れ」をかきたてるには、それだけじゃ足りないんだろうと思います。
「魔法のiらんど」がそれでうまくいっているとしても、ブログの場合はもうちょっと違ったかたちがあるんじゃないかなあと思っています。

とまあそんな古くて新しいテーマを思い出させてくれた本でした。自分の仕事の領域に引きつけて、思案の材料にしていきたいと思います。
あともちろん、作品としてもすごくおもしろかったのでおすすめです。こういう系の本をもっとご存知の方がいたらぜひお教えください。


※この2冊の本は、富山の薬売りよろしく家に来るたびに本を置いていく友人から推薦されたものです。どうもありがとう!

なつかしいブログ関連本の数々

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とある企画で、なつかしいブログ関連本の数々を引っ張り出しました。


ブログ本


個人的に特に刺さったのは次の3冊。

芸能人ブログカタログ300―有名人&TVタレント&スポーツ選手etc… (Eichi mook―PC★strike mini)芸能人ブログカタログ300―有名人&TVタレント&スポーツ選手etc… (Eichi mook―PC★strike mini)
販売元:英知出版
発売日:2005-11
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2005年時点の芸能人ブログのまとめ。
どのページを開いてもほとんど知らない人ばっかり(笑)。


Bloggers(ブロガーズ)―魅惑のウェブログの世界へようこそBloggers(ブロガーズ)―魅惑のウェブログの世界へようこそ
著者:高間 剛典
販売元:翔泳社
発売日:2003-11-06
おすすめ度:3.5
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突貫工事で急造された雰囲気が漂う2003年11月発売のムック。
みらのさんと宮川さんとnaoyaさんと平田さんが並んで映っているp95が熱い。


教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書
著者:ばるぼら
販売元:翔泳社
発売日:2005-05-10
おすすめ度:5.0
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ブログが一般的に普及する以前の日本のネット文化をまとめた本。今回ひさしぶりに手に取りましたが、当時のこういうアングラでカウンターカルチャーなノリが今の仕事の原点になってるんだなあと感慨深かったです。
それにしてもこの本をまとめたのはすごい、偉業すぎる。

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