カテゴリ:
松岡正剛さんによる漢字学者/東洋学者・白川静さんの入門書を読みました。


白川静 漢字の世界観 (平凡社新書)白川静 漢字の世界観 (平凡社新書)
著者:松岡 正剛
販売元:平凡社
発売日:2008-11-15
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


この本の元となった企画が、千夜千冊のバックナンバーとして残されています。


松岡正剛の千夜千冊『漢字の世界』白川静

本のほうも、千夜千冊のほうも、めちゃくちゃにおもしろい。そして、白川静という知の巨人にふれるこのうえない入門編になっています。

ではこの白川静さんがどういう人かというと、「漢字には、文字がなかった大昔からの人類の記憶と文化が刻印されている」と考えて東洋文化を広く研究した人です。

白川静 - Wikipedia

漢字研究の第一人者として知られ、漢字学三部作『字統』(1984年)、『字訓』(1987年)、「字通」(1996年)は白川のライフワークの成果である。甲骨文字や金文といった草創期の漢字の成り立ちに於いて宗教的、呪術的なものが背景にあったと主張したが、実証が難しいこれらの要素をそのまま学説とすることは、吉川幸次郎を筆頭とする当時の歴史学の主流からは批判された。しかし、白川によって先鞭がつけられた殷周代社会の呪術的要素の究明は、平勢隆郎ら古代中国史における呪術性を重視する研究者たちに引き継がれ、発展を遂げた。万葉集などの日本古代歌謡の呪術的背景に関しても優れた論考を行っている。

しかし、白川さんの「漢字の成り立ちに於いて宗教的、呪術的なものが背景にあった」という主張は、「実証が難しい」ようです。そのことで批判されることもあったようです。けれど、白川さんが豊かに描き出した古代東洋の民俗や歴史には、多くのフォロワーがいます。

『白川静 漢字の世界観』を著した松岡正剛さんがそうですし、『日本語が滅びるとき』の水村美苗さんも(たぶん)そうだと思うし、私が大好きな作家・酒見賢一さんもそのひとりです。
そのことを指摘したいい記事があったので紹介します。

酒見賢一『陋巷に在り』全13巻(1) - 腹ふくるるBlog
酒見賢一『陋巷に在り』全13巻(2) - 腹ふくるるBlog

この『陋巷に在り』という作品は、エキサイティングな物語と白川静的世界観のウンチクが高度に融合した超大傑作です。全19巻の北方水滸伝があれだけ売れるんだから、全13巻の『陋巷に在り』も少しは売れてもよさそうなものですが…。2巻までの物語だけでもアニメ化してくれないものかなあ。でないとあまりにもったいない。こんな作品が、ごく一部の人にしか読まれていないなんて、なんという損失!


取り乱したり脱線したりでまとまりませんでしたが、知識人を中心にフォロワーを生み出し続けている東洋文化の知の巨人・白川静の世界にふれようと思う人をひとりでも増やしたくて書きました。超おすすめです。


陋巷に在り〈1〉儒の巻 (新潮文庫)陋巷に在り〈1〉儒の巻 (新潮文庫)
著者:酒見 賢一
販売元:新潮社
発売日:1996-03
おすすめ度:4.5
クチコミを見る