92冊目 『本で床は抜けるのか』 西牟田靖

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井上ひさし。立花隆。本書で度々言及される書痴たちの破格のエピソードが好きで、引用元になっている本も過去に読んできた。馬鹿馬鹿しいまでの本好き加減を、しかし憧れをもって仰ぎ見て楽しんでいた。

しかしこの本はおそろしい。そしてまた破格におもしろい。ロマンもへったくれもない10年代の蔵書家のリアリティ。これは話題になるわけだわ! そんで文芸書のコーナーに置くべき(と思ったらもうそうなってるようです)。


ひるがえって自分は、自宅に2000冊を残し、これまでに1000冊をスキャンし、不要な1000冊を売り、実家に1000冊預かってもらってる。夫婦仲はとっても良好です。

関連 : 去年チャレンジした、壁一面の本棚の作り方。


91冊目 「赤ちゃんがすやすやネンネする魔法の習慣」 A・カスト・ツァーン / H・モルゲンロート

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寝かしつけを止めることで、かえってよく眠れるようになる。

感銘を受けた『フランスの子どもは夜泣きをしない』でよく理解できていた原理も、日本で主流の育児法の情報の洪水の中にいると、なかなか実行が難しい。心理的に。

    注 : 19冊目に登場

    でもその障壁を取り除いて、寝かしつけを必要とせず夜泣きもしない方法を実行するにあたって、この本のメソッドはとても役にたった。


    実行した初日から効果があり、二日目してほとんど完成。昼寝の時間も、夜の就寝も、寝かしつけの時間はゼロ。そして、中断もほとんどなく眠り続けてくれる。

    夫婦の自由な時間を取り戻した僕らは、うれしさのあまり踊れもしないマクミラン版のロミジュリをリビングで踊って喜びを爆発させた。

    なぜもっと早く……とは思わないことにした。睡眠に悩まされない、夫婦と家族の明るい未来をただ祝いたい気分。

    ※ちなみにうちは現在9ヶ月です。


    A・カスト・ツァーン H・モルゲンロート
    2009-08-03

    90冊目 「ドミトリーともきんす」 高野文子

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    本棚アプリ「Stand」の井上さんとランチしながら本の話をしていて、高野文子の新作を薦められた。



    過去作品はもちろん全部読んでる。好きだ。でも、高野文子作品は自分の読みたいタイミングで出会いたい、読みたいから、薦められたからといってすぐ手に取るつもりはなかった。でも他ならぬ井上さんのコメントに背中を押されて購入。すると。

    なにこれ、最高傑作!!!

    サブカルくそ乙女(私を含むが、世界に胸をはれる最高品質の漫画だった! 子どもがいるおうちだと、きっとますますおろしろいよ。

    89冊目 「追憶のハルマゲドン」 カート・ヴォネガット

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    ここしばらく、育児や医学の本ばかり読んでいたのだけれどそれが落ち着いて、ひさしぶりに趣味の読書のために図書館へ。最初に目について借りたのがこれ。


    ヴォネガットの作品として初耳だったので予備知識ゼロで読みはじめたら、死後に企画された未発表原稿中心の追悼本だった。冒頭の辞を書いているのは息子。でもそれを知らないもんだから、ヴォネガットが自分で遺書のようにして生前供養をテーマにした本を書いたのかと思っちゃった。なんとおもしろい発想を実行に移すものだと。

    しかし、誤解が解けてからもおもしろさは変わらなかった。息子に、こんな風な文章で追悼してもらったら、これ以上の望みは贅沢だろう。そういうものだ。So it goes.


    カート・ヴォネガット
    2008-08-22


    88冊目 「UNDER GROUND MARKET」 藤井太洋

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    届いたその日に、一気読みした。Kindle連載でも読んでいたものの、再度してなおおもしろい。

    2018年。N円という仮想通貨が流通する近未来を描いた経済小説。政府未公認の通貨を使った地下経済というと、ダーティな犯罪劇をイメージするが、実際はその逆。形のないお金(N円)だからこそ、信用が第一。登場人物たちがやりとりしているのは、お金ではなく実は「信用」なのである。
    主人公たちは、友人やクライアントとの信用をなにより重視し、それゆえクリーンでフェアな振る舞いを徹底する。だから物語も、信用が失われるかもしれない……という危機によって展開していく。

    もちろん、現実世界でも信用は第一だが、地下経済という舞台がそれをより純化させた物語世界を生み出した。こんなに気持ちのいい奴らが活躍する経済小説は他に知らない。

    2015-03-22-09-53-02

    なお、この小説が最初に発表された2013年から先、例のBitcoinの騒動があった。しかし、物語が現実に追いつかれて陳腐化する様子はない。むしろそのはるか先、仮想通貨が普及しつつある社会の人間ドラマを描くこの本の凄みが余計際立ったように思う。おもしろいですよ。

    ちなみに、最初に読んだときの感想も書いていたのでリンクする。今回のとはまた違った感想を書いているので、興味のある方はこちらもどうぞ。
    http://sasakill.blog.jp/archives/50838305.html



    87冊目 「遠野物語拾遺」 京極夏彦 柳田國男

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    京極さん、ありがとうございます! あの読みづらい『遠野物語拾遺』をこんなにも素晴らしい本に編み直してくれて。

    2015-03-15-10-09-52

    元が元だから『遠野物語remix』ほど期待せずに読み始めたらこれがおもしろい。というか、こんなにおもしろい内容だったのかと目うろこポロリ。

    全299話を締め括るエピソードに選ばれたのは、遠野の空にはじめて飛行機が飛んだ話。単なる昔話ではない遠野物語の魅力を伝える、素晴らしい読後感を与える構成。素晴らしい。自分、遠野出身ですが、遠野に観光旅行に行きたくなった。



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