映画『ゲド戦記』の感想
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ゲド戦記を観た。
最初はシリーズ第3巻『さいはての島へ』の映画化と聞いていたけど、シリーズ第4巻から登場するはずのテルーが出てくることからもわかるように、実際にはかなりの部分がオリジナルストーリーだった。原作を忠実に再現しようとして失敗する映画と違って、これはかなり期待できるかも、と思ったのは最初だけ。観終わってみると、釈然としない気持ちと、映画で初めてゲド戦記にふれる人にちゃんと理解されるだろうか? という奇妙な親心みたいなものが残った。
では何が問題だったかというと、
- アレンの抱える個人的な問題をテーマとしたビルドゥングスロマンとして物語を再構築したため、より大きなテーマが矮小化してしまった。というか、本来あるべきテーマから脱線してしまった。
ということに尽きると思う。
以下に挙げるのは、上記の問題にたいするつぶやきみたいなもんです。
- ビルドゥングスロマンを描きたかったのなら、素直にシリーズ第1作『影との戦い』を映画化すべきだったのでは。アレンに“影との戦い”を再現させようとしたため父殺しなどの余計な設定が必要となり、それに引きずられた結果、ゲド戦記の豊かなテーマが描ききれなかったのではないか。
- 映画冒頭で提起された、「世界の調和」や「人間と竜」といったテーマが半ば放り出されたままだった。「かつて人と竜はひとつだった」というポスターのコピーはどこへいった。あれでは、ラストシーンをアレンとテルーの恋愛感情の表現だと感違いする人も出てきてしまうのではないか。
- 「テルーの唄」は、映画本来のテーマに忠実な作りで、詞も曲も声もよくてめちゃくちゃ素晴らしかった。ただ、それではアレンのビルドゥングスロマンの文脈には(あまり)沿わないから、重要なシーンでありながら唐突な感じがしてすんなり入ってこなかった。ただ、それでも涙腺がぶわっときた。それくらい「テルーの唄」は素晴らしかった。
宮崎駿監督の感想は「素直な作りで、良かった」だったそうだけど、確かに素直な作りだった。そういう意味では、確かに良かった。小説『ゲド戦記』から受け取ったものを映画に還元しただけ、という感じで、変にひねったりしてなくて良かった。
▼ササクリップ / ゲド戦記 - livedoor クリップ
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