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ITmediaの名物記者・岡田有花の『ネットで人生、変わりましたか?』を読んだ。

収録されている記事の大半はすでに読んだことがあったけれど、本にまとめられたことでテーマがより明確になっていて、すごく、おもしろかった。

そのテーマとは、「ネットで人生、変わりましたか?」というもの。本のタイトルすばりそのまま。だけど、この問いかけが重層的になっている


- 著者(岡田有花)自身への問いかけ
- インタビュイー(ギャル社長、白石さんなど)への問いかけ
- 読者(わざわざこの本を買うくらいネットに興味のある人)への問いかけ


これはつまり、ネットで人生が変わった著者が、ネットで人生が変わった人を取材し、ネットで人生が変わった読者に届ける本だ。その三位一体の共犯関係が、この本をおもしろくしている。

でもこれは「おもしろい」だけの本ではない。
おもしろい以上に、インターネットの歴史を語るうえで「重要」な本だとに思う。


たかだか数十年ではあるけれど、インターネットの歴史について語った本はいくらでもあるし、「インターネットの歴史」でググれば参考資料はいくらでも出てくる。だけどそれは、私たちの実感とは遠い世界の話だ。

それは例えるなら、音楽の歴史を学ぶときに、クラシックしか学ばないような感じ。だけど、クラシックだけが音楽ではない。音楽の知識や技術の多寡に関わらず、ギターがひとつあれば誰もが、ブルースに祈りを、ロックに叫びをこめることができる。

ここ数年で爆発的にユーザーの増えたブログやSNSは、いわばブルースやロックみたいなものだと思う。ってことは岡田有花記者は、ローリングストーン誌みたいな役割を果たしているような気がする。

あるいは、「民俗学」と「柳田國男」の例えのほうがわかりやすいかもしれないけど、マスの声の集積から歴史を立ち上げるというプロセスが、すごくよかった。


というのが、『ネットで人生、変わりましたか?』が、重要な本だったと思った理由です。
すごくおもしろいんでおすすめします。

関連リンク : IT戦士 岡田有花リンク集