阿佐田哲也の『麻雀放浪記』を誤解していた
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著者:阿佐田 哲也
販売元:角川書店
発売日:2000
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阿佐田哲也の『麻雀放浪記』の存在は、麻雀好きの教養としてもちろん知ってはいたけれど、お恥ずかしながら、読んだことがありませんでした。
何かに夢中になると文献から入るほうなので真っ先に読んでいてもおかしくなかったと思うんですが、和田誠が監督した映画版は見たし、マガジンで連載されていた『哲也-雀聖と呼ばれた男』も読んでいたしで、「まあだいたいこんな作品だろう」とたかをくくっていました。もっと言うと、あなどってました…今日の今日まで。
本当にすみませんでした!
まさかこれほどまでに文学的な名作だとは思ってもみませんでした。大衆文学の超傑作にふれた感覚という意味では、初めて北方謙三の『水滸伝』を読んだときの衝撃に近いものがあります。
特によかったのはラストシーン。あの切なさと滑稽さのバランスは、ちょっと他ではお目にかかれない出来。阿佐田哲也という希有の作家が、あの時代に、この素材に出会ったからこそ結実した奇跡のような瞬間が封じ込められています。
あまりに感激したので、写経のように文章を書き写してみました。
「いい勝負だったな、おっさんーー」
と健がいった。
「俺たちも、もうあんな博打はもう二度とできねえかもしれねえや。おっさんのことはずっと忘れねえぜ」
達も進み出て言った。
「おっさん、俺もおっさんみてえなバイニンになって、おっさんみてえに死ぬよ」
「おっさんーー」と私も言ったが、あとが言葉にならなかった。
私は、自分の人なつこさに又驚いた。出目徳のみならず、健にも、達にも、精一杯の友情を抱いた。この、仲間のような、敵のような男たちに。
帰り道は私が自転車をこぎ、健と達が幌の中におさまった。上野駅で輪タクを返すと、私たちは又下車坂に向かった。勝負の残りをやるためにーー。
古びることのない、青春小説の大傑作です。今から読んでも遅くないですよ!
コメント
コメント一覧 (2)
個人的には第三部が好きです。
ぜひ、「東一局52本場」や「黄金の腕」も読んでみて下さい!
そして、シメは「ドサ健バクチ地獄」。
ヤバいです…。
順番に読んでいきます!