西村賢太の『人もいない春』を読んだ ★★★★☆
最近はまっている西村賢太。新千歳空港で買って、帰りの便で読みました。
人もいない春
著者:西村 賢太
販売元:角川書店(角川グループパブリッシング)
(2010-06-30)
販売元:Amazon.co.jp
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収録されているのは以下の6本。
・人もいない春
・二十三夜
・悪夢 ― 或いは「閉鎖されたレストランの話」
・乞食の糧途
・赤い脳漿
・昼寝る
3本目の「悪夢」は珍しく風刺的なショートショートでいわゆる北町貫太サーガではないので、それがこの短篇集の隙といえば隙。でも、後半の3作の内容がすごくいい。
自伝的私小説というジャンルだと、いつかの日かモチーフが底をつくんじゃないかとか、飽きられるんじゃないかとか、読者ながらそんなことが心配になるんですが、それはたぶんまったくの杞憂だなと思いました。
この後半の3作には、全盛期の松本人志のコントのように、哀しさと残酷さと滑稽さのなかに企みのない笑いどころがあって、飛行機の中で声を出して笑ってしまった。誇張なくお茶吹いたw
北町貫太のキレ芸の鋭さは、もうこれ一本で一生読者を飽きさせないレベルにまで突き抜けている感じがする。ここまできたら、モチーフが底をつくこともないし、飽きられることもないんじゃないかと思う。笑いは、ベタであることが喜ばれるわけだから(もちろん、笑わせるための小説というわけじゃないんですが)。このキレ芸をとことん突き詰めて、いろんなバリエーションを読ませてほしい。たぶん一生ついていきます。
ちなみに、松本人志とYouのふたりで西村賢太の私小説を原作にした映画が撮れたらおもしろそうだなと、そんなことまで思った。もちろん監督は松本人志ではない人で。
最高におすすめです。
人もいない春
著者:西村 賢太
販売元:角川書店(角川グループパブリッシング)
(2010-06-30)
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