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連休を利用して中島らもの『ガダラの豚』に取りかかったら、評判通りものすごくおもしろくて全3巻をあっと今に読み終えてしまった。


ガダラの豚 1 (集英社文庫)ガダラの豚 1 (集英社文庫)
著者:中島 らも
販売元:集英社
(1996-05-17)
販売元:Amazon.co.jp
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内容は、超能力とトリックをめぐるミステリ&エンターテインメント。そう書くとテレビドラマ『TRICK』を思い出される人も多いと思いますが、あのおもしろさのルーツと思ってもらえれば近いです。というかたぶん、影響を受けているんじゃないかと思います。

検索すると、こんな風な検証をしている人もいますね。

『ガダラの豚』(中島らも著)とTRICKは酷似している。作品の発表は『ガダラの豚』が1993年で先ではあるが、それ以前に、蒔田氏や堤監督の頭の中に構想があったのかもしれない。もしかしたら、TRICK製作サイドは『ガダラの豚』を知らないのかもしれないし、 インスパイアされたのかもしれない。ここではその相違点と共通点を挙げる。

via 『ガダラの豚』との相違

小説の中でおもしろいのは、超常現象と呼ばれているもののトリックをさんざん暴きながら、トリックかどうかわからない(本物の超常現象かもしれない)ものを読者のもとにポンと投げ出すあの怖い感じ。『TRICK』を初めて深夜放送で見たときに受けた衝撃とそっくりです。

ただ、締め方がちょっと残念ではありました。

ガダラの豚は大傑作と呼ぶべき代表作だが、第3部で突然ドタバタ劇になってしまうのは少し残念だ。映像化しやすい娯楽作品として完結させようとしたのだろうか。第1部と第2部のような、じわじわと迫りくる凄みが第3部にはない。スピーディーなハリウッド映画のような、わかりやすくて派手なエンディングで物語は幕を引く。評論家の間でも、第3部については賛否両論があるようだ。

しかし、作品全体としては100点満点で、

第1巻 120点
第2巻 120点
第3巻  60点

という感想で、全体としては満点である。

via 情報考学 Passion For The Future

でも、通読するとそういうことが気にならない。むしろ愛嬌になってます。
なので、スゴ本の中の人のコメントが一番しっくりきますね。

もちろん、アラを探せばいくらでも、叩けばネタは山ほど出てくる。ラストの怒涛の活劇では、強引なつじつまあわせに鼻白むし、サブリミナルが出てきたときはガックリときたが、それでも物語のパワーにもっていかれる。そう、もっていかれる読書なのだな。

via わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

ちなみに、この本ではアフリカの「呪術」が大きなテーマとして取り上げられていますが、それについて思い出したのは酒見賢一の中国を舞台にした小説『陋巷に在り』(全13巻)。


陋巷に在り〈1〉儒の巻 (新潮文庫)陋巷に在り〈1〉儒の巻 (新潮文庫)
著者:酒見 賢一
販売元:新潮社
(1996-03)
販売元:Amazon.co.jp
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孔子の弟子・顔回を主人公に、ここでも「呪い」が大きなテーマになっています。

『ガダラの豚』も『陋巷に在り』も、それぞれの地域や時代で、呪術や呪いといったものが社会的にどのような役割を果たしたかという問題をテーマにしつつ、小難しいことを抜きにしたエンタメ小説に仕上がっているところに、共通点を感じました。全13巻とかなり長いですが、最初の数巻だけでも十分おもしろいので、そういう話が好きな人が本好きにおすすめします。

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というわけで『ガダラの豚』。
読み始めると止まらなくなるので、つらいおもいをしないためにも3冊一気の購入をおすすめします。

中島らも『ガダラの豚』全3巻セット (集英社文庫)中島らも『ガダラの豚』全3巻セット (集英社文庫)
著者:中島 らも
販売元:集英社
(2012-02-01)
販売元:Amazon.co.jp
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