大塚英志の「ストーリーメーカー」が主張する可能性についてのメモ
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ストーリーメーカー 創作のための物語論 (アスキー新書 84) (アスキー新書)
先月発売された大塚英志氏の『ストーリーメーカー』を読みました。
氏の発表する創作論はこれまでにも読んでいて、その意味では特別な目新しさはありませんでした。それでも私が氏の創作論を追いかけるのは、「自分も小説家になりたい」と思っているからではなく(笑)、創作という行為とネットの関係が気になるからです。
それを大塚英志氏は次のように書きます。
インターネットは「作家」の特権を支えていた「発表の機会」の寡占と「書く技術の神秘化」の二つのうち、前者を一気に解放しました。誰もが「書いたもの」を発信しうる時代になったからこそ、「書く技術」もあらゆる水準で技術として開かれていってしかるべきだ、と考えます。「物語」もまた、その点では例外ではないのです。(『ストーリーメーカー』 p15)
思えば、90年代にはまだ「将来はライター」になりたいと憧れる人がいたと思いますが、今は皆無と言っていいんじゃないでしょうか。ライターを目指す前にブロガーになっているはずです。では現在の小説家志望は? 創作の技術だけが今後も神秘化されたままであるなんてことは、たぶんないはずです。私はそのことに興味があるし、おもしろいことができるような気がしています。
冒頭に「特別な目新しさはありませんでした」と書きましたが、洗練度という意味では『ストーリーメーカー』が現時点のベストではだと思います。わかりやすく実践的で、素晴らしい内容でした。おすすめです。
以下は既刊の関連本。
キャラクターメーカー―6つの理論とワークショップで学ぶ「つくり方」 (アスキー新書)
物語の体操―みるみる小説が書ける6つのレッスン (朝日文庫)
キャラクター小説の作り方 (角川文庫)