紀伊國屋新宿本店の「ほんのまくら」フェアから、3作のネタバレと推薦文

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「本の闇鍋状態…!紀伊國屋の思い切ったフェアが凄い」というまとめがソーシャルメディアで話題です。現時点で30万ビューほども見られているし、Twitterは6000以上、Facebookでも3000以上のシェアがされています(このあともっともっと伸びる)。
紀伊國屋書店の新宿本店はちょうど会社の近所だし、この祭りに参加しなきゃ本好きの名が廃るぜ!
と思って駆けつけたら、現場は意外と冷静で、一畳ほどのスペースに5人くらいがいるだけ。この「ほんのまくら」フェアの場所は2階の中央と聞いてはいたんだけど、あまりにもこぢんまりとしたスペースだったので、売り場の前を何往復しても気づかないくらいだった。
意外とこんなもんなのかもね (´・ω・`)。
実際のラインナップを見てみると、夏休み課題図書みたいな説教くさい教養文学は並んでいなくて(「坊ちゃん」も「人間失格」も「雪国」もなかった)、書き出しの工夫が秀逸な、比較的最近の作家を中心にそろえられていました。このフェアが終わる頃には、きっと誰かが本の正体をリストにしてくれると思いますが、自分がわかる範囲では、そんな印象を受けました。
ということで何点かお薦め。
鉄三のことはハエの話からはじまる。
兎の眼 (角川文庫)
著者:灰谷 健次郎
販売元:角川書店
(1998-03)
販売元:Amazon.co.jp
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つい最近、角川文庫から新装版が出た時に、装丁が可愛かったからという理由で手にとったんですが、書き出しを読んだ瞬間に心を持っていかれ、そのまま一気に読み終えました。まさに「ほんのまくら」フェアが目指すような体験だったですね。児童文学としてのおもしろさだけでなく、プロレタリア文学の影を感じさせるところもおもしろいです。
減るもんじゃねーだろとか言われたのでとりあえずやってみたらちゃんと減った。私の自尊心。
阿修羅ガール (新潮文庫)
著者:舞城 王太郎
販売元:新潮社
(2005-04)
販売元:Amazon.co.jp
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理解も共感も要らないので(というかあってもなくてもどっちでもいいので)、舞城王太郎の疾走感のある文体を徹頭徹尾たのしむための本だ、という気がします。舞城王太郎作品のなかでは、かなり好きな方でした。
腹上死であった、と記載されている。
後宮小説 (新潮文庫)
著者:酒見 賢一
販売元:新潮社
(1993-04-25)
販売元:Amazon.co.jp
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中国の架空の王朝に関する歴史小説を、司馬遼太郎っぽい文体を使って書くことで、まるで実在するかのように読者に信じこませる痛快な悲喜劇。知性でオブラートにつつまれた下ネタの数々と、そこはかとない切なさが同居する歴史的傑作を描き上げた酒見賢一という稀代の作家の、デビュー作の書き出しの第一説が、「腹上死であった、と記載されている。」という人を喰ったものだってのがいいじゃないですか。
これは個人的な感情に過ぎないかもしれないけれど、「ほんのまくら」フェアに『後宮小説』が含まれていたことで、このリストは信用できるなと思った次第です。偉そうにすみません。
というわけで、お薦めにそって未知の一冊買ってみました。
ブルース・リーが武道家として示した態度は、「武道」への批判であった。
アメリカの夜 (講談社文庫)
著者:阿部 和重
販売元:講談社
(2001-01-17)
販売元:Amazon.co.jp
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なにこれめっちゃおもしろそう!!!
しかしこのブックフェア、いい企画ですね。
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後日、書き出しの秀逸さといえばこれもそうだなと思い出したので追記します。
春が二階から落ちてきた
重力ピエロ (新潮文庫)
著者:伊坂 幸太郎
販売元:新潮社
(2006-06)
販売元:Amazon.co.jp
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気になる書き出しですよね、これ。